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映画レビュー:No.683 デトロイト

デトロイト
143分 / アメリカ
公開:2017年7月28日(日本公開:2018年1月26日)
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジョン・ボイエガ
ウィル・ポールター
ジェイコブ・ラティモア
ジェイソン・ミッチェル
ハンナ・マリー
ジャック・レイナー
ベン・オトゥール
アンソニー・マッキー







この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。



twitterのブックマークという新しい機能が俺の「いいね」の使い方と限りなく同じなのだけど、やっぱり一度つけたいいねを消すのは揉める可能性があるからやめろということなのだろうか。

▼マクロからミクロへ~巧みな視点のコントロール
語弊を恐れず言えば凄く面白かった。キャスリン・ビグローの描く極限状態、緊張感は内臓に来る。
デトロイト暴動とその中で起こったアルジェ・モーテル事件を描いた映画。

事の発端となった違法酒場の摘発事件から映画が始まる。特定の人物ではなく事態の混乱を生々しく映す冒頭。
序盤は群像どころか特定の登場人物すら示さない映像素材的な手触りで、タイトル通り暴動当時の「デトロイト」という街を俯瞰的に見せる。
そこから登場人物それぞれがどう暴動に関わりアルジェモーテルに集うのか少しずつ物語が大きいところから小さいところに集約されていくのだけど、緊張状態のデトロイトの市街地は常に何が起こるかわからない一触即発な雰囲気があって序盤からどのシーンも怖い。

▼構成による物語の軌道の乗せ方
先述した通り序盤は映画としての登場人物すら示さないほど意外と"世界観"の説明に時間をかけるのだけど、それは一見すると映画として映っているシーンにどういう意図が有るのか見失いかねないほど物語性を放棄した構成になってる。
ただ暴動の発端となった違法酒場摘発の中での細かい出来事や、暴動鎮圧に当たる警察の疑心暗鬼とエスカレートする暴力、ジェイソン・ミッチェル演じるチンピラの「アメリカで黒人として生きるということ」という悲痛な怒りをユーモアで包んだとてもわかりやすい実演など、全てアルジェでの暴行事件の前フリになっていて上手い。
街という俯瞰が必要な対象を捉えつつ観客の主観を突き放さないのはとても難しいけれど、構成で映画としての物語にきちんと引き込むように作ってあってだからこそ中盤のアルジェモーテルに至る頃には惨劇の予感がパンパンに膨れ上がってる。

▼暴力のメカニズム
差別描写は微妙に思考停止な差別ではなく暴力のメカニズムとして描いているところがより普遍的な問題提起に映った。この映画の悪者たちの場合実は本当の差別主義者よりも人権的な一線を認めている部分がある。
彼らは虐める事が目的なんじゃなくあくまで自供のために過剰な暴力を振るってる。それでも十分クソだけど、パパッと証拠でっち上げて私刑で済ませるような悪ではなく彼らは彼らで純粋に疑心暗鬼による不安から暴力を恐れている。

僕自身も多数、少数という力学の働く場にいたら自分がどちら側でどういう風に振る舞うのか全くわからない。
自分に対して不安であるということは他人に対してはもっと不安に感じるだろうし、だからこそ自己防衛のために我先にと暴力に頼るような人間に成り果てるかも知れない。
それはとても怖いことだと思う。安心というのは不安を力づくで握りつぶすことではない。

結末の苦さは未だに現在進行していること現実に対する問題提起も強くはらんでいる。
まあとはいえ、実際公判を経て出された結論(事実として残っている実際の事の顛末)を考えると実話ベースだって言うならアルジェにいた白人警官の役とかこの映画のように描くのって逆に差別的なんじゃないか?と思ったりもするんだけど、僕個人としては実話かどうかが作品の評価に一切影響していないのでそこはもっと普遍的な寓意として受け取った。
そういう意味で人種性別関係なく、これもまた他人事ではない。サスペンスとしてもそうだけれど、人間こそがとても怖い作品だった。

★★★★★★★★☆ / 8.5点

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