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映画レビュー:No.685 BPM ビート・パー・ミニット(原題「120 battements par minute」)

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143分 / フランス / R15+
公開:2017年8月23日(日本公開:2018年3月24日)
監督:ロバン・カンピヨ
出演:ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート
アーノード・バロワ
アデル・エネル
アントワン・ライナルツ







ネタバレはありません。




男性の乳首の生物学的な存在意義がわからん。

▼2017年カンヌ国際映画祭グランプリ
2017年のカンヌ国際映画祭グランプリ作品。ちなみにパルムドールが最優秀作品賞でグランプリが審査員特別賞。
今年は配信も含めて2017年のカンヌのコンペ作品が全て国内で見られる非常に珍しい年で、より横軸的な楽しみ方ができて良いなと思う。僕は元々カンヌ関連作とストライクゾーンが近いのでこういう傾向はとてもありがたい。

▼団体とその中の個人という観客の感情移入の導き方
原題の120BPMは胸が高鳴った時の脈拍の数値から来てるらしい。もちろん物語内で流れるハウスミュージックとの親和性も。
音楽用語だしそういう印象は間違ってないんだけど、映画を観終わるとよりエモーショナルな響きが有る。

ACT UPという団体、その中の個人と順番に視点を絞っていく冒頭からの構成がまずとても上手い。
最初の会議のシーンから彼らのアイデンティティに関する必要な説明をきちんとしつつ個性的な設定で興味を引くのだけど、それこそACT UPという団体の紹介としてとても相応しいアティチュードだと思う。
そこから社会的な動機以上に各々を支えている感情的な動機にフォーカスしていくことで今度は団体の中の個人が見えてくる。前提となっているゲイやエイズ患者という"立場"をレッテルとして一面的に見せない。当たり前だけど一人ひとり人生があって、病気との向き合い方も人それぞれというところから物語が始まる。

▼より個人のエモーションを描いていくストーリー
個人に焦点が映っていくことで映画もラブストーリー、青春物的なみずみずしさを帯びてくるのがとても良かった。
結果が出るかどうかではなく仲間と一緒に戦っていることが孤独と向き合う彼らの強さになっていて、そういう序盤があるからこそ少しずつ病状が進行して当たり前だったことが出来なくなっていくことの苦々しさ、もう戻れない不可逆な時間の流れが胸にギュッと来る。
ACT UPはその熱量先行の青臭さも含めてどこか学園祭っぽい。
みんなで一生懸命計画を立てて、成功も失敗もいい思い出だねってくらいに笑って振り返って、夜には打ち上げで踊り狂う。彼らは彼らなりに本気で、だからこそ輝いてる。
ただそういう享楽的とも言えるスタンスは、よりシリアスな現実に追いつかれた人から足並みが揃えられなくなる。

▼正しい、間違っているではなく「そうするしかない」という彼らの切実さの物語
強行的で怖いもの知らずなACT UPの活動方針は現状に対してより即効性の高い反響を期待するところから来ているのかなと思う。
政治的な交渉としては正直間違ってると思うけど、それでも明日どうなるかわからない不安や怒りからくる彼らの刹那的な生き方もわかる。
一応アクティビストの社会的立ち位置やそれを取り巻く情勢に関しては極めて一面的な描き方になっているのであくまで客観的に捉えたい作りではある。製薬会社にだって一理有るのかもしれないしACT UPが必ずしも正しいわけではないのだと思う。
彼らの精神性や行動原理、そこから見える自意識を描こうとしている。

切実な主張を感じさせつるけれどそれを届けるために映画としての面白さや物語によるエモーションを大事にしているのがとても良かった。
面白いしオススメもしやすい。少し長いけれど、だからこそ観終わって思い出すもう戻れない季節に、変わってしまった全てにこみ上げる余韻が有る。

★★★★★★★☆ / 7.5点


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