FC2ブログ

映画レビュー:No.687 身をかわして(原題「L'esquive」)

身をかわして
117分 / フランス
公開:日本一般公開無し(特集上映にて観賞)
監督:アブデラティフ・ケシシュ
出演:サラ・フォレスティエ
オスマン・エルカラス
サブリナ・ウアザニ





この記事はネタバレを含みます。ご了承下さい。



定期的に言われるのだけど俺の髪質や生え癖は刈り上げるのが難しいらしい。

▼映画のガワと作り手の主張
荒い撮影、切れ味の悪い編集、情緒不安定な人物描写等々、見てくれ、技術ともにお世辞にもあんまり上手な映画ではない。
ただガワが未熟だからこそその上で何を言おうとしているのかにこちらも集中して観ることが出来て、なんとなし色んな映画を観るようになってリテラシーも上がってきたのかなと逆説的に実感した。
技術的に至らないからといって必ずしも面白くないわけじゃないんだよな映画は。

▼想像力の足りなさからくる思春期のすれ違い
まっすぐだけど不器用な男の子と悪気がないゆえに悪者になりたくない事なかれ主義な女の子を中心に展開する人間関係のすったもんだ。二人のグズグズっぷりと周りの友だちの多干渉が事態をモリモリこじらせる。
思春期特有の身内びいきみたいな理屈が当の本人たちを置き去りにしているという、このデリカシーの無さがいかにも小さい世界を生きている若者って感じ。
大体どの人物も目指そうとしている落とし所が間違っている。

▼告白によって決定的に変わってしまう関係
気持ちを伝えることで決定的に変わってしまう関係があるという恋愛の"スクラップ"な側面を描いている。
告白する側としては前提を明らかにしただけでやることが変わるわけではないし、相手も理屈としてそれはわかっていても、どうにもこうにも意識してしまって不自然な関係になってしまう。
吐いた言葉はなかったことにできないし、一方では重すぎて受け止められない。そうやって結局お互いの感情が釣り合わなくなる。
お互いがお互い「こんなはずじゃ無かったのになあ」なんて思っているけど、もう元には戻れない。

▼主人公の印象
主人公は友人グループのイキったノリになんとなく反りが合わず、彼女にはよくわからない理屈でフラれ、家庭は混乱の真っ只中で中々安らぐ場所がない。ここにはいたくないって場所ばっかりだから鬱屈ダダ漏れでムスッと散歩したりしてる。
多分何か良いこと起きないかなって感じの気持ちなんだろう。そういう時はあるよな少年。
そんな彼だから自分の思い通りにならない現実に対して「なんでよ!」と勝手なことが言えるヒロインに惹かれたのかもしれない。

▼恋愛面と対照的に何度も蘇る女性の友情
この映画は女性がとことん強くて、主人公を含め男は彼女たちの勢いを前に圧倒され、萎縮してる。
女の子同士でも何回もバチバチの口喧嘩を繰り広げるのだけど、だいぶ後戻りできない罵り合いをしているように見えて次のシーンで普通につるんでたりその辺りの明け透けな友情の在り方に驚く。
僕だったら「お前そんな風に思ってたのか!」ってわかった途端もう今までと同じように仲良くなんて無理だし、それは僕の器が小さいんじゃなくて彼女たちが情緒不安定なレベルで割り切り上手なんだと思う。

▼大したことない話を引っ張るだけの物語的な弱さ
主人公が告白したけど返事は保留中、とその程度の事態をとことん引っ張るなかなか図太い構成で、特に観客は状況を俯瞰している分物語の幼稚な負荷のかけ方にストレスを感じる部分もあるように思う。
僕も半分は興味を保ちながらもう半分では「何この話」って呆れながら観てた。

▼渦中の盛り上がりと俯瞰した事後のアイロニカルな苦さ
あんなに「この問題が解決しなきゃこの世が終わる」って勢いでギャーギャーわめきあってた人たちが最後にはなーんにも無かったかのように主人公の不在を気にもとめてなくて、青春の残酷な諸行無常が見える。
言ってしまえば「片思いが一番楽しい」みたいな話で、世界中どこにでもあるような恋愛の報われなさなのだけど苦いものは苦い。
でもまあさんざっぱらフラれ続けた僕に言わせればそういうのは時間が解決してくれるものなので、最後まで大した話じゃないなとも思うけど。いつか良い人に会えるよ、多分。(無責任)
実は一番大事なのはタイミングだからさ。恋ってそういうもんだよ。

★★★★★☆ / 5.5点
関連記事
スポンサーサイト

Comments 0

Leave a reply