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映画レビュー:No.690 ミスミソウ

ミスミソウ
114分 / 日本 / R15+
公開:2018年4月7日
監督:内藤瑛亮
出演:山田杏奈
清水尋也
大谷凜香







ネタバレはありません。




タバコの箱や十円玉によるサイズ比較でピンときたことがない。

▼主人公に負荷をかける序盤~暴力に至る動機の感情移入を積み上げる導入
ツイキャスで大きなネタバレしちゃったかなと嫌な汗かいたけど予告でガンガン言ってた。一安心。

物語が観客に与える心的負荷に容赦がなくて本当に最悪だった。褒めてる。途中から口の中がたまらなく酸っぱくてごくごくお茶を飲んだ。

序盤はとにかく主人公を追い詰めるという抑圧の描写が徹底されてて、物語世界の"悪"の存在を観客にしっかり認識させる作り。
「観ていることしかできない」という観客の立場を活かした映画的なストレスをこれでもかと処方される。起こっている出来事が手加減抜きの不快感に満ちててとてもえらい。
そうやって主人公の鬱屈に付き合ってきた観客が「もうこいつらぶっ殺してもいいっしょ」と思うところまで行くというのが大事で、イジメだけでも十分過ぎるほど追い込まれているのにその挙げ句家族が焼き殺されるという「はい、閾値越えました」とハッキリ全員が思える素晴らしい動機づけをしている。
とはいえ実はすでに取り返しがつかない状況になっていて、観ている全員に復讐したほうが良いよと思わせる裏側で彼らを殺しても何も残りませんとしっかりカタルシスをかわせるように作っているのが上手い。この時点で観客が感情的な理由だけで主人公を正当化するように仕向けられてる。

▼ナメてる観客にショックを与える視覚的なバイオレンス描写
というわけでいよいよ主人公が殺人マシンと化すという、いわばここから本番という展開が第二幕。
とはいえ個人的にはどうしても邦画の綺麗どころな女優さんが主演張ってる映画で起こる出来事の程度なんて大体こんなものでしょうとたかをくくってしまう部分があって、この映画に関しても暴力に至る部分の描写とか、追い詰める時のサスペンスとか、そういう心的負荷の方向で観客に嫌な思いをさせるんだろうなと予想しながら観てた。
序盤のイジメの描写とかまさにそういう機能だったし、だからこそあいつらが苦しんで後悔しながら死んでくところを観たいわけさ。人を殺して捨て台詞の一つでも言って「ざまあみやがれ!」とカタルシス感じさせてくれるのかなと。ここに至ってああなるほどそういう話ね!くらいに構えてた。

そんな僕の期待を一身に背負ってついに主人公が最初の反撃を繰り出す。満を持してスローモーション。「いやったあ!」と快哉上げる準備もバッチリ。
と、そんだけ煽って煽って煽って煽った挙げ句、そこからはこっちが気持ちよくなれる範囲を遥かに越えた凄惨な暴力が始まる。急にものっすごい視覚に訴えるバイオレンスで、劇場中がもれなく萎えぽよ。とにかく即効性の高い嫌悪感が描写一発一発にこもってる。
別に音や編集で盛り上げたりとかも無くて、そっけないほどのテンポで次々とオーバーキルが繰り出される。人の骨はそんな簡単に折れないだろ!っていう悪意とかも随所に込めつつ、人を嫌な気持ちにさせる描写が正しく悪質に機能してる。
場内が事故った空気で充満してて、僕も映画で初めてくらい口の中が酸っぱくなった。

▼救いのない世界観の構築~設定の妙
展開も二ひねりくらいあるのだけど、どっちに転んでもとにかく救いがない。
閉塞された田舎という場所が熟成する暴力と、世代によって肯定され、黙認されてきた暴力によって世界が病んでいる。とにかく全員最悪。褒めてる。
時代設定がガラケー全盛期くらいに設定されてるのも上手くて、これは丁度僕の学生時代の頃だからリアリティが肌感としてわかるのだけど、つまりまだインターネットに逃げ場が無い時代なんだよね。
感情はリアルに向けるしかなくて、とどまって濁る。負の連鎖を止める手段が無い。

暴力を使って復讐をしてみたところでどうです?スッキリしましたか?という、そういう話。わらの犬とかの系譜かな。一種のカントリーノワール。
だから結局この映画からなにか教訓を得るとしたら「逃げるが勝ち」ってことだと思う。何なら至言でしょ、至言。
演技力なのか演出力なのか人物の描写に強度の足りなさを感じる部分もあったけど、とにかくストロングスタイルで観客にタイマン挑んでてとても偉いと思った。
今年屈指の最大瞬間風速を記録しました。オススメしていきたい一本。ただ何がどうすごいのかあまり知らずに観たほうが楽しくビックリできると思う。

★★★★★★★☆ / 7.5点



ちなみに原作描いてる押切蓮介だとハイスコアガールがとても好きなのだけど、この映画からはだいぶ距離がある。程よく中和できると思うので映画観終わって「このままだとまずい!」と感じた僕のような人は読んでみると良いと思う。
僕はあまりに心がささくれだったので急遽ワンダーストラックを観てから帰りました。世界を信じる心を取り戻せて良かった。

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