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映画レビュー:No.693 かぞくへ

かぞくへ
117分 / 日本
公開:2018年2月24日
監督:春本雄二郎
出演:松浦慎一郎
梅田誠弘
遠藤祐美
森本のぶ







この記事はネタバレを含みます。ご了承下さい。



4万円くらい握りしめて服を買いに行きたい。

▼シンプルだけれど骨太な内容
裏側にある時間まで見えるような人物の強度があって、シンプルなプロットでも骨太な内容の映画。
基本的には二者択一という心的負荷によって物語を引っ張る力を生み出している。主演の松浦慎一郎さんの持っていたエピソードを元に膨らました話らしいのだけど、主人公の彼女側の話は全て創作ということで、「対立」という映画が面白くなる要素を意識的に物語に組み込んだことがわかる。

▼対立のアンバランスさ
ただ遠藤祐実演じる佳織側の言い分が常に正論なので対立として常に優劣がある。
梅田誠弘演じる洋人も見た目に反して主人公に強制力のある選択を迫るような立ち回りをするわけではないので、より主人公個人の主観的選択の色が強まってしまうのは感じ方の別れるところだと思う。
「そりゃこうなるわ」という修羅場を正論で完全にねじ伏せられる主人公がそれでも洋人を選ぶところにもうワンロジック欲しい。個人的にはどう考えても佳織の方が代替不可な関係に見えるし、クライマックスの洋人側の解決は主人公いらないんじゃないか?と思ってみていると本当に主人公がいなくても解決できる話で、そういう部分がエモーション先行で行きすぎる感じはした。
まあエモーションが先行するのは別に良いのだけど、物語の展開に感情論以上のロジックが欠けているのでやや筋書きが直線的すぎる。
対立の心苦しさをよりフラットに描けるかもっと選択に必然性が生まれる直接的な不確定要素があったら展開に意外性が生まれたと思うのだけれど、そこに驚きが少なく弱さが残る。
主人公が考えなしに同じ失敗しすぎだし、毎回同じ事で怒られる。全員最初から最後まで感情のベクトルにあまり変化が無いので、個人的にはもう少し主人公と嫁家族を直接的にぶつけたら脚本的にはもう少し起伏が生まれる感じがする。まあそれは違う映画になってしまう気もするけど。

▼描きたかった物語に向かうラストシーン
主人公も佳織も家族と他者という異なる人間関係の間で揺れていて、どちらの事情もしっかり描けているからこそ悲しい。
主人公は彼なりに佳織の事も大事にしていたのだと思うけれど、佳織側の事情をわかっている観客としては「お前わかってないよ」という考えの甘さもわかりやすく見えてくるので、どちらかと言うと怒っている佳織の方に理を見てしまうのは同じ男として「もう少し頑張れお前!」とモゾモゾしてしまった。
佳織側にも家族の偏見という主人公を傷つける自分勝手な理屈があるのだけれど、そこが意外と伏線として活かしきれていないのはもったいない。
ただ二人の問題に最後まで向き合えなかった主人公の弱さが浮き彫りになっていて、ラストの洋人との会話を観てからタイトルに戻ると描きたかった物語はわかりやすい。

監督は家族というのが「家の族」と書くこと、つまり家によって無条件で成立する関係性というのはもはや成り立たない時代になりつつあると感じていると話していて、だからこそ違ったファミリーの形を描きたかったと言っていた。
個人的には友情と恋愛のどちらかを選ばなければいけないというのはナンセンスだと思うので今回の物語においてその考え方が救いになるかというと疑問も残るのだけど、それ自体は面白い発想だなと思った。

★★★★★★ / 6.0点


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