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映画レビュー:No.696 ラブレス(原題「Нелюбовь」)

ラブレス
127分 / ロシア、フランス、ドイツ、ベルギー合作 / R15+
公開:2017年6月1日(日本公開:2018年4月7日)
監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ
出演:マリアナ・スピヴァク
アレクセイ・ロズィン
マトベイ・ノビコフ
マリーナ・バシリエバ







この記事はネタバレを含みます。ご了承下さい。



コーディネートにグレーのパーカーが入る女性はポイント高い。

▼ロジックではなくアイロニーで展開する話
子供の捜索に対してミステリーとしてロジカルな描き方をする映画ではなくて、どちらかというと夫婦の無責任で利己的な人間性に対する皮肉として展開が機能しているような印象だった。
またどの時点からやり直せばいいのかという話でもないので、事態の解決にも作品の主眼はない。今回の出来事を通じて何を感じましたか?という映画と観客の関係性で作品が完成する作りを狙っているのだと思う。

▼「子供は親を見ているぞ」という寓話
僕はこの映画を振り返る時「子供は親を見てるぞ」という事を解釈の軸として持っていて、その点彼らは最初から自分が一番可愛くて子供がどう感じるかという視点が終始欠落している。
失踪時にそれぞれが不倫相手と過ごしていたという事実に始まり、そもそも何が原因でこういう事になっているのか考えもせずに「あの時やめておけば良かった」と相変わらずなケンカを繰り広げ、しまいには不倫相手に捜索を手伝ってもらう有様。
結局彼ら自身も息子が出てきてほしいのか半信半疑だから捜索もグダグダと後手を踏んで出来ることも無くなっていくし、まあ途中からこれは助からないなという絶望感しか無い。

▼一つ一つ思い当たるフシがある些細なディスコミュニケーションやエゴイズム
そういう直接的な意味のある場面以外にも、人といる時もSNSに乗せる写真を撮るような自分大好きな精神性とか、結局映画でこれだけ大きな出来事があっても数年後には同じように他者に対する思いやりを欠いた行動をとっていたりとか、結局彼らは何が悪いのかわかっていないという皮肉で一貫していると思う。
ただそういう一つ一つは些細なディスコミュニケーションやエゴイズムの在り方っていうのは現実の僕らにもどこかしら思い当たるフシがあるものであって、寓話としてとても鋭い機能を持っている。
その意味でもしかしたら主人公夫婦がちゃんと子供の無事を願って速やかに協力的な捜索ができていれば違った結果になったのかもしれない。つまり子供がこの二人のもとでなら暮らしてもいいかもと思える家庭を作り直すことができていたらね。

こういうアイロニカルな話は作り話でないと描けないものでもあるし、ちゃんとそういう意味で観客を絶望的な気持ちにさせてくれるのだから良い映画だなと思った。
冒頭と対になるラストシーンで主人公夫婦がまた同じことを繰り返すかもしれないという予感と、映画を通じて失った存在を観客に思い出させる。
とても映画的な余韻。いとをかし。

★★★★★★★ / 7.0点

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