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映画レビュー:No.717 告白小説、その結末(原題「D'après une histoire vraie」)

告白小説、そのけ
100分 / フランス、ベルギー、ポーランド合作
公開:2017年11月1日(日本公開:2018年6月23日)
監督:ロマン・ポランスキー
出演:エマニュエル・セニエ
エヴァ・グリーン
ヴァンサン・ペレーズ
ドミニク・ピノン







この記事はネタバレを含みます。ご了承下さい。



緑茶飲料は綾鷹派。

▼作家って大変!という話~怪しい隣人が日常に入り込んでくるスリラー
スランプな作家が謎の美女ファンと出会ってなんだかんだ色々起こるという、総じて作家って大変!という話。
色んな見方のできる一筋縄ではいかないミステリーで、そこら辺は脚本をやってるパーソナルショッパーの監督オリヴィエ・アサイヤスのテイストも有るのかな。パーソナルショッパーは観ながら結構連想しました。

まあまず表面的なミステリースリラーとして「どこに連れて行かれるんだ!?」という不穏な空気が抜群。
軒を貸して母屋を取られる的な名声の乗っ取りが目的なのか、はたまたなにかペイバックや別の陰謀があるのか、終始エヴァ・グリーン演じるエルに対して絶妙に半信半疑な距離感を保つ職人芸な語り口。
「俺なら怒る!」というところで主人公が事なかれに流れるのがストレスだったりもするのだけど、とはいえ気づいたらイニシアチブ握られてるっていう得体の知れない状況がゾクゾクする。
やっぱ普通じゃない事態に対して目的が見えないっていうのは興味の持続として強烈。そもそも個人的に目が大きい人はなんか怖いなあと思っちゃうんだけどエヴァ・グリーンは格別に怖かった。(偏見)
とにかく熱狂的ファンの粘着質な怖さ表現がキレキレで、メール勝手に返すし代理で公演行くし、実はすっぽかしてるし、最終的には軟禁して毒殺までしようとするし、ちゃんとミザリー的なエスカレーションも描かれる盛りだくさんな展開。
途中で主人公が普通に過失で足の骨折っちゃって物理的に逃げる元気が無くなってしまってからは特に大変だった。

▼作家って大変!という話~生みの苦しみのメタファーとしてのエル
一方で生みの苦しみのメタファーとしてエルが描かれているようにも見えるのが本作のとても味わい深いところ。このニューロティックな深読みも裏側にある主人公の大変なストラグルを思うと僕は笑うに笑えないのだけど、まあ面白い。
実はここに関してはその手の映画の中でもだいぶ親切設計で、何ならエヴァ・グリーンが登場してきて「ELLE(フランス語で三人称の"彼女")」と名乗るところからわかる人にはわかると思う。ちなみに僕はラストシーンでようやく気づきました。ははは。
プレスに載っている幻想文学研究家の風間賢二さんの解説がとても良くて、このエルというキャラは原作だと「L」の表記なのが映画ではELLEというEL/LEという相似形をなす単語に置き換えられてるらしい。つまりダブル(分身)であると。
注意深く観ていると髪型とか服装とかファッションの演出もかなり周到で面白いと思う。

▼エルをひっくり返すことで見えてくる主人公の不安
主人公は身内の苦労を切り売りしてヒット小説を書いたことに自責の念があるし、フィクションであることの強迫観念にとりつかれてる。
ほとんどの場合創作のテーマというのは作家の中から出てくるものだけれど、そういう業を背負うことを恐れているのだと思う。
単純に生みの苦しみの話でもあるし、作品が出来ないというのは自分のアイデンティティが揺らぐということでもある。
エルは彼女の話を聞き、時に批評したり、時にモチベーションを促したり、どんどん外部との接続を絶って二人の距離を縮めていったり、最後には物語そのものにまでなる。ゴーストライターっていう設定にしているのも面白いところ。
序盤から主人公がなんでエルを必要とするのかイマイチはっきりしない部分もあるけれど、ダブルという補助線一つで全部ひっくり返るのが超気持ちいい。

ラスト、「Based on a true story(事実に基づく話)」というタイトルが出て広がる余韻の深さよ。まさにリアリティとフィクションの境目がわからなくなる作家の苦悩そのものの話。実から生まれる虚に支配されてしまうっていう。
最後に示される円環構造も中々皮肉。また死ぬ気で新作書かないといけない彼女の苦労を思うとお腹痛くなっちゃうぜ。

★★★★★★★☆ / 7.5点

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