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映画レビュー:No.701 娼年

娼年
119分 / 日本 / R18+
公開:2018年4月6日
監督:三浦大輔
出演:松坂桃李
真飛聖
冨手麻妙
猪塚健太
桜井ユキ
小柳友
西岡徳馬





この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。




一日一個ずつ食べようと買った4個入りの焼きプリンを一晩で全部食ってしまうタイプの人間。

▼三浦監督らしいスタティックで他者と切り離された主人公
なんか勝手に時代劇なのかと思ってたらゴリゴリの現代劇でびっくりしちゃった。三浦大輔監督は愛の渦もそうなのだけど表社会からは見えないところにある世界というものに対して説得力のある描き方をする気がさらさら無いようで、導入部はこのあと観るアベンジャーズの事を考えたり中々話に入り込めなくて苦戦した。
僕自身誰かから無条件指名されるような資質をこれっぽっちも持っていないからか冒頭のような展開はものっそい鼻白んでしまうとこがある。映画に余計な私情を持ち込んでしまうのはまだまだ修行が足りん。

愛の渦、何者と三浦大輔監督作品を観るのは三作目になるけれど、今作もとても三浦監督らしいスタティックで本質的なディスコミュニケーションを抱えた主人公で、内容的にも過去作と同じように他者とぶつかって成長する物語だった。
とにかく松坂桃李が触れるもの全員惚れさすマンをここ最近のやたら濡れ場受けが良い演技力で絶妙に色っぽく演じていて本当に信頼できる。日常描写の若干イタい口下手っぷりとセックス時の滑稽なくらいの一生懸命さの対比もテーマ的に噛み合ってる。
助演だと桜井ユキが作中では比較的イノセントなヒロインとして登場するのだけどまあ彼女が覚悟ある女優さんだと言うことはわかってるので後で絶対脱ぐなと一発でわかるし案の定物語的にも彼女の変化が重要な役割を担っている。
あと西岡徳馬ね。ガキ使での汚れっぷりで何でもやる男だということはわかっていたけどまあ本当に凄い。この映画の一番おもしろいところは西岡徳馬の出てるとこ。
あの場面での松坂桃李の「そこまでやってくれとは誰も頼んでないけど」という"この男ノリノリである"っぷりも最高だし、そこから一度我に返ったところから再びフィニッシュまで持ち直したプロ意識には同性として尊敬禁じ得ない。僕は絶っっ対萎える。そりゃあもうバキッと。

▼個人差の尊重~需要と供給の説得力
全体的に物語を進める場面まで抽象的に映しててもっと主人公たちが地に足の着いた人間だという部分を描かないとテーマがぼやける印象は持った。ただそういうリアリティの無さはさておきコールボーイという職業の社会的需要に関してはとても現代的な問題だと思う。
そもそも性欲それ自体をタブー視しすぎるのは危険で、ヒロインの「性欲で成り立つ需要と供給は汚らわしい」という言は実際彼女自身によって欺瞞だと証明される。
恋愛感情と性欲は時折矛盾してしまうけれどそれは誰でも持ち得るし性差も関係ない。そういう歪みの中で漂白された価値観ばかりを正しいこととして押し付けてしまうと行き場をなくして息苦しくなる感情がある。それは正しいとか正しくないとか多い少ないという話ではなく、人それぞれ当たり前に持っている個性として、少なくとも個人の繋がりに置いては尊重されるべきなのだと思う。
その象徴としてセックスがあって、それ自体がブラックボックスとして扱われる物事をきちんと情動に乗せて説得力ある描写にするアプローチがとても良かった。

▼自己肯定のために社会という相対的な規範からあえて逸脱すること
この映画は自己肯定とか自己承認のために他者を必要とする事だってあるじゃんという普遍的なコミュニケーションを描いていると思う。
個人の欲望やそれが満たされる幸福に対して常に社会性、社会規範をものさしにする必要はない。だってそれできちんと関係が成り立ってんだもん。他人にとやかく言われる筋合いなんて無いよ。
今はとても多干渉な時代でどこの誰とも知らない人間がこっちの幸せに関係ないモラルを振りかざしてすぐ口出しをしてくる。
そういう相対的な正しさの欺瞞と言うか、個人の裁量の範囲でなら社会に対してエゴイスティックな選択をするのだって間違ってないぞ、という寄る辺ない人の居場所を作るような物語だと思った。
そこに対して最も一元的にタブー視されがちな性欲を用いたところが面白かったし、特に安易に否定できない人は多いんじゃないかな。まあそういうもんだという幻想を持ってしまうのは危ないと思うけど。
ムラムラするときだってあるっしょ、人間だもの。という程度の余白は常に持っておきたいし、「それは正しくないよ」という欲望を覚えてしまうこと自体を否定してはいけないなと思う。
そして世界にはそういうものを引き受けるための仕事ってのもあって、職に貴賤は無いなと改めて思うわけです。

▼物語を見ていて少し疑問に思ったところ
まあとはいえ本域できっついなあという生理的嫌悪を抱かせるような女性が登場しないのはちょっとこの映画自体もバランスを取ってる感じがする。まあそれをすると結局差別的ってことになるのかもしれないけど。
セックスは本質的に男性が奪う側になる行為だから女性の明け透けな性欲処理って構図が成り立たないのかも知れないけど、主人公にとって娼夫という職業が決して楽しさややりがいばかりではないという部分も職業映画として見てみたかった。実際性風俗ってもっと即物的な関係もたくさんあるだろうし。なんとなし現状は男性からの女性に対する幻想みたいなものも感じてしまう。
何より「それでも彼がこの職業を選ぶ」という部分にもっと深みが出たと思う。

あと冒頭とラストに同じ相手とセックスするのだけど僕はあんまり二つのシーンに違いが感じられなくて、演出で盛り上げるほど描写に説得力を感じなかった。前戯が長くなっただけじゃないか?

★★★★★★★ / 7.0点


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