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映画レビュー:No.703 心と体と(原題「Testrol es lelekrol」)

心と体と
116分 / ハンガリー / PG12
日本公開:2018年4月14日
監督:イルディコー・エリェディ
出演:アレクサンドラ・ボルベーイ
ゲーザ・モルチャーニ
レーカ・テンキ
エルビン・ナジ







ネタバレはありません。




好きな女性のタイプは、顔で言えば川栄李奈。

▼新宿シネマカリテで観たよ、という枕
スクリーン単位の集客の絶対数が低いとは言えシネマカリテは当日券がよく売り止めなってていい映画館だなと思う。いつもロビーに活気があるし最近は動線も少し広くなっていい感じ。
二年前にロビーで開場待ちしてたら普段映画館で映画観ないんだろうなという出で立ちの高校生男子二人組がカウンターで「君の名はってやってますか!」と勢いよく質問していてエモい気持ちになった。見た目でわかれ。

▼双方の立場から描かれる足並みの揃わないコミュニケーションの可笑しみ
大筋としては少し変わった恋愛映画なのだけど人生にとっていかに相互理解というものが大事かという普遍的な話だと思う。
僕は男女が自明にくっつくだけの映画は嫌いなのだけどこの映画はちゃんと登場人物が切実に他者と関わりを持とうとする気持ちが描かれていて、自分の身に置き換えて考えてしまう部分も多かった。

色恋に関しては"卒業した"還暦手前の男性と、不器用で人と上手くコミュニケーションが取れない性に未熟な女性という、全く違った意味で恋愛に臆病な二人の物語。
一方からの視点の話ではなく相手に対してどう思って行動しているのかという描写が双方にあって、観客は両方の心情を知っているからこそ行動の意味とそれが上手くいかない結果にもどかしさを覚える。
相手が「何考えてるかわからない他者」だからこそ自分なりに色々考えてアプローチをするし、それがもう一方から見るとそれはそれでしっかり「何考えてるかわからない他者」として映ったりもするという、そういうお互いの心的状況の作り方がとても上手い。
理解された!あの人は私をわかってくれてる!っていう気持ちが先走りすぎてグイグイ行ったら相手がヒイちゃったり、逆に私は別にこの人の特別な人じゃないんだ...と勝手にネガティブ思考をこじらせて自己卑下したり、それがまた相手からすると「拒絶された!」なんて絶望の種になったり。
そういう誰でも身に覚えがあるような勘違いと期待の間で揺れる恋愛のメンタリティを客観的に見せる、というなかなか気まずい物語。基本的に主人公二人の足並みがなかなか揃わず近づいたり離れたりしてる。

▼人と違うことに不寛容な時代
昨今は相対的な価値基準で他人を推し量る人が多い。
多数とか少数とかはあくまで結果論であって優劣を証明するものではないはずなのに、そういう"普通"というものをふりかざして人を傷つける人がいる。
人と違う事にとても不寛容な時代だと思う。同調圧力や流行り廃りに迎合することが渡世術になっていて、それが出来ない人はどんどん孤立していく。
この映画のヒロインも不器用で感情表現が得意ではないゆえに「変な人」として職場で笑われてて、それはすごく奇妙なことだと思う。

▼作中に登場する様々な世代の男性から見えてくるもの
この映画には様々な世代の男性が出てくるのだけど、その男性の年齢による変化に男性原理の哀れさみたいなものがにじみ出ていて面白い。
若いうちは根拠もなく自信満々で誰にでも粉かける。それが初老に差し掛かるとセックスアピールの衰えとともに不安でアイデンティティがグラグラ揺れだす。最終的に還暦を迎える頃には自信喪失の裏返しとして全てを諦めてるし、いざ火がついてもすっかり牙が抜けてて戦い方も忘れているという。
男らしさって難しいというか、結局男性原理主義もまた価値観への迎合なんだろうね。

▼それでも他者と繋がりたいと思うこと
ヒロインは役柄的に外面でわかりかねる部分が大きい人物なのだけど、そこを全く理解出来ない存在として描かない会話のシミュレーションの場面が絶妙に効いている。
彼女にもこうありたい自分っていうのがあって、一生懸命変わろうとしてる。
僕もサシ飲みとかの前の日にめちゃめちゃ家で会話のシミュレーションするタイプの人間なのだけど、大体こう来たらこう返すってのを20通りくらい考えて実際には二行目くらいで想定してなかった答えが帰ってきて困っちゃう。
そんなもんだ。思い通りにいかないことばっかだけど、だからわかりあえる喜びも大きい。
じんわりと心が励まされた。

★★★★★★★★ / 8.0点

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