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映画レビュー:No.708 枝葉のこと

枝葉のこと
114分 / 日本
公開:2018年5月12日
監督:二ノ宮隆太郎
出演:二ノ宮隆太郎
矢島康美
松本大樹
木村知貴
廣瀬祐樹
國武綾
いまおかしんじ






どんな服着てもいまいちイメージと違うのは体型によるものだということを最近やっとわかった。

▼矛盾する主人公の人間臭さ
キャラクターについて説明が無く場面間の感情の因果関係が弱いという非常に他者性の強い脚本構造を持つ映画。
言ってみれば感情移入とは真逆の話運び。散文的というか。

良いやつなのか悪いやつなのかわからないけれどとにかく目が離せないという強烈な佇まいで映画に登場する主人公は諦観と焦燥、客観と主観、理性と欲望、本音と建て前、自己破壊と思いやりなど多くの矛盾を抱えている。
人と理解し合うなんて無理だし期待もしていないという無気力なムードをビンビンにまとっているのだけど、そういう「全員バカ」って見下す視線が最終的には「そんなとこにいる俺もバカ」って自分の方にまで向いているような強烈に厭世的な主人公。
とはいえこの映画はこっちが主人公に対して「こういう人なのかな」と捉える印象を固定させてくれない。全然笑わないなと思ったらすごい変なところで笑うし、どこでスイッチ入ったのかわからないくらい急にキレだす。
彼の掴みどころのなさには観てる人みんな「えぇ...」て困ってしまうと思う。その突き放したユーモア感も面白い。

▼人の中にある矛盾~他者と付き合っていくということ
この映画は同じ人物の建て前と本音を言わせている描写が多くて、それも人間関係の本質的な矛盾を示しているように思う。必要悪というか、正解不正解は見る人によって変わるもので絶対的な答えは無い。建て前が救いになることもあるし本音が誤解を招くこともある。
例えば人間関係一つとっても1か0で割り切れるほど実際は単純じゃない。嫌なやつだけど一緒にいないといけなかったり仲が良くても違う思想の部分があったり、常に一人の人間の中に重なるところと重ならないところがある。
別人なんだから当たり前なんだけど、でも世の中には単純化して考えようとした結果齟齬が生まれて衝突する関係がとても多いように思う。言ってる僕にしたってわかっててもたまにそこに陥ってしまうこともある。
好きな人の嫌いなところとか、どうでもいいやつの的を射た発言とか、家族への愛憎とか他人への親しみとか、人の間にある関係性ってのは常に可変的で距離も形も変わり続ける。気分一つで簡単に険悪になるくらいで、そんなの片方だけが努力したところでどうしようもない。だからといってスパッと諦められるほど強くもない。
結局どこまで言っても矛盾だらけで、どんなにわかった気になっても思いがけない部分てのは残り続ける。
ただ本質としてみんな一人だから一人じゃいられないのかなと思う。そこもきっちり矛盾している。人間ってほんとめんどくさい。

▼人生の枝葉~死ぬまで結論の出ない人生
軽口や他愛もない話などは人生の枝葉の部分かもしれないけれど、枝葉があるから本音の幹がわかるということもある。
ただ息をするだけなら一人でも人は生きられるけど、実際は他者を通じて初めて人生の価値が生まれる。
枝葉の無い人生なんてなくて、だからこそ普遍的な余白の話だと思う。
最後の最後までこの映画は結論を出さない。でもそりゃあ死ぬまで結論なんて出ないのだからこれがありのままの現実のようでもある。
結局僕たちはそうやって他者と向き合い続けるしか無いのかなと思う。だからこそ彼のことを考えてしまう。
観れて良かった。

★★★★★★★★☆ / 8.5点

↓いつでも拍手がほしい。

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