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映画レビュー:No.710 レディ・バード

レディ・バード
94分 / アメリカ / PG12
公開:2017年11月3日(日本公開:2018年6月1日)
監督:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン
ローリー・メトカーフ
ルーカス・ヘッジズ
ティモシー・シャラメ
トレイシー・レッツ







朝弱すぎて年に数回「金払ってるけどどうせ今の状態なら劇場でも眠くて話にならないからいいや」と布団の中で予約していた映画を飛ばす決断をする日がある。
あとですっっっっごい自己嫌悪する。

▼マンブルコア出身ならではの等身大な人間ドラマ
グレタ・ガーウィグは流石マンブルコア出身だけあって半径5mの感情を描くのがとても上手い。
自分の見ている世界とその外側の世界のギャップが埋められない思春期の話で、時折フッと主人公を見つめる側の視線が入る辺りにとても大人な情感がある。
時代設定が2002年とまだネット文化草創期なのも良い。やっぱり逃げ場がなくなるしドラマの対人性の純度も高くなる。SNS時代だったらこの主人公だともっと陰湿で性格の悪いことが起きそうだもん。

▼青春の痛さ~経験するということ
何も知らないという状態から何かを経験した状態になるときの痛みをとてもヴィヴィッドに描いている。痛みや後悔は青春の必要悪だなと改めて思った。
世の中にはそういうのと無縁に充実した思春期を送れる人もいるだろうし、そりゃあ何もかもハッピーなまま今の自分にたどり着けるならそれが理想だけど、思い通りにならないし何が正解かもわからないのが常に一発撮りでやり直しの効かない人生の難しいところ。
僕も痛みや反省、後悔から学ばなければいけないことばっかりだったし、その時は本気で落ち込んだり傷ついたりしてきたけど、そういうものが何より大切な経験になってる。
そうやって一つ一つを俯瞰できるようになっていくことが成長なのかもしれない。

▼思春期における理想と現実
とはいえ思春期なんて人生ままならないことが受け入れがたい年頃。
主人公も「なんで私の人生こんなハードモードなんや!」と鬱屈を溜め込んでいて、現実をないがしろにして理想を追っかけている。
楽しみにしていたことがやってみたら自分の思っていた感じと違ったり、相手の反応が自分の期待していたそれではなかったり、そしてそういう時の自分の反応もまた相手にとってそうであったり、まあ思ったとおりにならないことばかり。
でもそういう風に「自分の思ったとおりにならないのが人生」ということを学べるのが学校であり思春期であって、青春を通過するっていうのは大なり小なり痛いものだったりする。というのが今ならわかる。
痛いっていうのは周りから見る痛々しさではなくて、本人の中で自分の可能性が確定してしまうことの痛みというか、理想の自分にはなれないということを思い知る痛みというか。だけれど一方で自分の可能性を発見する喜びもあって、だからこそ人生は捨てたもんじゃない。

▼不可逆な時間を通過することの余韻
この映画で描かれる高校3年生の一年間は親子でいられる最後の時間でもあって、終わらないでほしいなあと思った季節に終りが来る話というのは映画という時間表現ともとても相性がいい。
あの頃はずっと高校生でいられると思っていたし、逆に自分の親が自分と同じように高校生だったなんて想像もしていなかった。
主人公にとって母親は最もアウト・オブ・コントロールな存在だったけれど、終盤で彼女が「あんなにわからなかったお母さんの気持ちが少しわかったよ」ということを伝えるシーンは、大人になったんだなあっていう感動と人生のチャプターが終わってしまうことの切なさと、そういうのを全部ひっくるめた人生のかけがえなさと様々なエモーションが胸に来てボロンボロン泣いた。
しかもその表現の映画的なことといったら。そりゃあもう上手いんだ。

今となっては良いことも悪いことも続かないとわかってるし、悪いことがいい経験になったりするのもわかってる。
でもそういうことはこの時期に色々な経験をしたから身についたんだということを思い出した。人を傷つけてしまったこととか、自分が傷ついたこととか、そういう苦い思い出もいっぱい思い出した。
あの頃の僕を知ってる人にちゃんと「ごめん」と「ありがとう」を伝えたくなったし、何よりあの頃の自分に大丈夫って言ってあげたい。
ビッチももともと処女だぜ。そこからどこにでも行けるよお前は。

★★★★★★★★★ / 9.0点

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