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映画レビュー:No.711 四月の永い夢

四月の永い夢
93分 / 日本
公開:2018年5月12日
監督:中川龍太郎
出演:朝倉あき
三浦貴大
川崎ゆり子
高橋由美子
青柳文子







この記事はネタバレを含みます。ご了承下さい。




デブ活を始めようと思う。

▼ゆっくり流れる時間とそれに取り残される主人公の感情
「時間が解決する」ということをとても映画的な感情で表現している作品だと思う。
抗いがたい未練や喪失という過去の引力はその上に新しい思い出を積み重ねることで少しだけ弱めることができるのかもしれない。
彼女の心の穴とそれでもやってくる日常には本質的な因果関係はないのだけれど、その関係ない日常の中でふと過去に戻ってしまう心の描き方がとても丁寧で惹きつけられた。

▼日常のささやかな変化とそこにある感情の機微の繊細な描写
まず27歳の主人公の生活に起こる変化がとてもリアルで、その中に寂しさ未満の感情が薄く広がっていく感覚に同じ年頃としてすごく感じるものがあった。
同年代の結婚や妊娠、職場の移ろいや生活の変化などゆっくりと時間が前に進んでいく。過去が離れていく感覚というか未来への根拠もない不安というか、今立っている場所は時期に消えてしまうんだっていうことへの焦燥を実感する瞬間がたまにある。
主人公は一度就いた定職を辞めてアルバイトをしてる。休日は午後までダラダラ寝てラジオが趣味という。身に覚えがありまくる。一年後どうなってるんだろうか、ということがわからないような日々を過ごしてる。

▼映画としてテクノロジーを回避すること~描かれる感情の純度
映画としてテクノロジーを上手く回避しているのも僕はすごく好き。
ラッパーのKid Fresinoがインタビューで
辛いこととか思い出を心にとどめる強さを持てよって、俺は思うんです。みんな、SNSですぐに言うでしょ? 痛みを分かち合うとか、肩を組み合うとか、そういうのはカッコイイことじゃないし、何かを伝えようと思ったら1人で大声出さなきゃダメなんですよ。
って言ってて、この映画も大声は出すわけではないけれど自分の感情と向き合うことっていうのは大切なことだという、そういう純度の高い葛藤が描かれていてとても共感した。
僕もネットに逃げることで安易な解決を測るのは嫌いだし、それでなにか解決するとも思ってない。結局自分の中で答えを探さなきゃいけないんだよ。

▼時間は不可逆さに対する柔らかな肯定
とはいえ人はいつだって一人じゃない。
主人公は友だちもいるし人間関係には恵まれているけれど、未来を生きる人たちが時々自分にとって苦しかったりする。結婚とか夢とか。死別っていうのはそれとは真逆で、彼女にはどうしても向き合えない過去がある。
僕たちは過去の積み重ねの上でしか今を感じることが出来ないのかもしれないけど、生きていれば思い出が塗り重なってまた新しい一歩を導いてくれる日が来るかもしれない。
主人公も何か一つ決定的な出来事があるわけではなく色々なところから少しずつ新しいキッカケをもらっているのだと思う。そうやって読めなかった手紙を開けて、元恋人の家族に会いに行く気持ちができる。

悲しみが常に現れているような人はいない。でもふと心の隙間に蘇ってしまう時間がある。
とても柔らかな再生の物語で、ドラマチックではない日常の当たり前の希望を感じる。
劇中で使われる赤い靴の「書を持ち僕は旅に出る」という曲もすごく良くて、聴いてはこの映画や主人公の暮らす国立に思いを馳せてる。
観れてよかったなあ。人生が中々前に進まない時期の優しい肯定。

★★★★★★★★☆ / 8.5点

一つだけ映画の評価と関係ないところでいちゃもんがあるんだけど、三浦貴大が「今度個展やるんで見に来て下さい!」ってどう見てもグループ展じゃねえかというチラシを出したの意味がわからなかった。
キャラクター描写の一環なのか作り手がマジでわかってないのかわからないくらい豪快に間違ってて笑ってしまった。

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