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映画レビュー:No.712 ガチ星

ガチ星
106分 / 日本
公開:2018年5月26日
監督:江口カン
出演:安部賢一
福山翔大
林田麻里
モロ師岡
博多華丸







継続利用特典で毎月ソフトバンクからTポイントが500円分もらえるからそれで漫画を一冊ずつ買ってる。

▼主人公のダメっぷりが徹底されている序盤
ケイズシネマの上映開始のチャイムが競輪の打鐘の音になっててすごい気がきいてるなと思った。
後でドラマの再編集劇場版だと言うことを知ったけど観ている時は違和感全く無かったので逆説だけれど劇場映画としてきちんとしていると思う。
結論から言うととても素晴らしかったし、少なくとも僕の友だちの間では全く評判が聞こえてこないのでもう少し観られるチャンスがあったら良いのにな。

主人公が筋金入りのダメ野郎で冒頭から観客の感情移入を全力で突き放す。ちなみに見た目的には元阪神の下柳にそっくり。他意はない。
ほとんど刑務所かってくらい競輪以外何もない競輪学校のストイックな生活描写から元プロ野球選手の彼がなぜここに至ったかの回想に入るのだけど、とにかく身からサビがボロンボロン出続けるばかりで同情の余地が全く無い。
観客としてはどこかでこんな主人公にも良いところがあるんじゃないかと待っているのだけど、結局8年かけて時制が現代に戻ってきても別に何か改心したり奮起してここに来たわけじゃないことだけが伝わるという、とにかく主人公としてのふさわしくなさばかりが際立つ。

▼主人公がいかにダメかということを徹底しているキャラクター描写
だらしなくてもそこそこにプロでやれていたから自分を甘やかす不摂生が抜けない。
酒にタバコにギャンブルにととにかくその日暮らし。息子の誕生日をパチンコですっ飛ばし、拾ってくれた友人の奥さんを寝取る。特に息子の件は主人公が彼の能力で良いとこ見せられる唯一にして最大のチャンスなのに、そこですら頑張れない人間性の絶望的な低さには観客の信用も決定的に失う破壊力がある。
競輪学校でもダントツの劣等生で、そうなれば他の人より一層努力をしないといけないはずなんだけど、たまの休日にはまっ先にタバコと酒を入れて次の日の練習に支障をきたし、更に恥を上塗りする。
やれと言われたことをやってるだけでは他に勝てないくらい肉体的な衰えが大きい年齢だし、そもそもやれと言われたことすら出来てない。
努力をしても結果が出ない、とかでもないんだもんなあ。明確に、努力をしてないから結果が出ない。これを観続けるという中々マゾヒスティックな映画体験が続く。

もともと息子へのポーズとしての努力とか「どうやら稼げるっぽい」という程度の薄っぺらな動機しか無いから主人公にはここから抜け出すためのハングリー精神や向上心がない。
「これだけダメなんだからそろそろ頑張ってくれないかな」と観てる人みんな思うはずなんだけど期待は裏切られ続ける。
とにかく安易なドラマを作らない。ここが徹底されてる。

▼変われない主人公とそれを変えるほどの熱
途中で一度奮起して競輪学校から一つステージを上げるのだけど「おっ、いよいよ違う戦いが見れるのか!?」と期待したら結局全然変わっていない。相変わらずタバコをスパスパ吸うしすぐラーメン食う。プロ意識、皆無。
本当に人は中々変われないし自分に厳しく居続けることは難しいということを意地悪ーく描いている。
そんな主人公を動かすキャラクターは主人公以上に頂点とどん底を極めている。高いところから才能とそれを磨くための努力を見せつけ、ボトムから這い上がる意思の強さで主人公を突き動かす。
彼の戦う姿勢から「ここまで努力しないと何かを変えられないのか」ということを主人公は痛感する。言葉にすると陳腐だけれど映画として彼らのドラマがぶつかるところに生まれる熱に確かな説得力がある。
彼が主人公の名前を呼ぶところ、ベタだけどめちゃめちゃグッと来た。教官も言っていたけど、多分彼も競技者としてあのレースの主人公を否定していないのだと思う。
あれは要するに「お前を認めるぞ」と言っているわけで、一番遠いところにいた二人がついに肩を並べた瞬間なのだからそりゃあカタルシスあるよ。

▼競輪の内包するドラマ
序盤から主人公がはっきりしている話だけあって、途中で別の人物の主観になって別段広げるでもなくすぐまた主人公の物語に戻ってくるところは「後のドラマのために観客に必要な情報をくれたんだな」ってやや垢抜けなさを感じたりしたんだけど、それがクライマックスでちゃんとドラマチックに見せる伏線になってて熱かった。
モロ師岡の言う「競輪って、面白いねえ」の一言がとても味わい深い。
おそらく予算の都合もあるのか競技としての競輪のロジックはそこまで突き詰められていないけど、本作の場合ロートルがしがみつくセカンドキャリアと若者のなけなしの夢がぶつかりあう競輪という競技の内包しているドラマの面白さを描いている。
映画が積み重ねてきたものが作る「主人公と脇役」という物語マナーを一気に相対化することで競輪という競技の本質が浮かび上がるクライマックスはその競技をよく知らない僕にも刺さった。
構成がややいびつなとこもあるっちゃあるけど、それを差し引いてもとても良くできてて感動した。
四月の永い夢と同じ日に観たのだけど良い映画ってのはどこからでも出てくるものだととても嬉しくなっちゃう二本立てだった。

★★★★★★★★ / 8.0点

↓ここで拍手ボタンを押すというささやかな親切は必ず将来にあなたの身に返ってくるはずです。知らんけど。


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