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映画レビュー:No.713 ビューティフル・デイ(原題「You Were Never Really Here」)

ビューティフルデイ
90分 / イギリス / PG12
公開:2017年11月8日(日本公開:2018年6月1日)
監督:リン・ラムジー
出演:ホアキン・フェニックス
エカテリーナ・サムソーノフ
アレックス・マネット
ジョン・ドーマン
フランク・パンド






この記事はネタバレを含みます。ご了承下さい。


「本読む前に一回携帯見よう」とか「あと5分休んだら皿洗おう」とかそういう先延ばしが一番体力ゲージ(a.k.a.やる気)を消耗することがわかってきたので、習慣にしていることは「迷うより先に行動する」ことを大事にしてる。
実際これを意識しだしてからかなり時間の使い方が効率的になって細かい余裕ができるようになった。忙しい時のちょっとしたコツ。

▼タクシードライバー系ノワールの最新傑作
タクシードライバーの系譜の最新傑作。ファーストシーンからグイグイ引き込まれてエンドロールは余韻で呆然としてしまった。すごい気に入ってしまって二日連続で観た。
削ぎ落とすことで強調されるものをよくわかっているとてもスタイリッシュで才気走った映像表現が多用される。モンタージュや劇伴の使い方まで見せない部分の使い方もとても上手い。映画の撮り方をよくわかっている監督という印象を持った。
特異な映像文法が作品の内容的にも正解というオリジナルな体験性を持つ作品で、僕はこういう比較対象のない映画について考える事がすごく好きなので観終わってからもずっと色々なシーンを反芻している。

▼暴力的な映像表現
映像的には決して説明的ではないのだけれど差し込まれるモンタージュのブロークンな手触りは映像表現として観客に刻み込む鋭さがある。そういう意味では説明的とも言えるし、映画の現在時制の中で不穏なバックボーンを匂わせる表現がとても上手い。
冒頭からフラッシュバックの不吉なイメージが暴力的に観客に刷り込まれるからか何も起こっていないシーンでも異様な緊張感がある。

▼主人公の実在を曖昧にする演出
亡霊のようにさまよう主人公と彼のダブルとしての少女という非常に虚実の境が曖昧な物語で「You Were Never Really Here(あなたは決してここにいなかった)」という原題も伏線的。
主人公の実在に関しては冒頭から常に不確かに演出されている。例えば彼は誰かと同一カットに同じサイズで収まることがほとんど無くて、あったとしてもその人は後に死んでしまうので彼の存在を証明できる情報が劇中に無い。
また冒頭から第三者の視線からカットが変わるとそこには誰もいないという"不在"の演出が繰り返し用いられていて、常に主人公の存在が俗世と一線を画している手触りが強い。

▼虚実の境をグラグラ揺らすノワール~作品の重層性と開けた解釈
物語が現実世界への再生とも現世からの飛躍ともとれるのも面白くて、常に死のイメージが強烈に付きまとう。
特に母親を湖に沈めてから後は全てが悪夢的で、全部彼の観た幻想なのかという重層的な視点を常に感じるのがとてもスリリング。湖のシーンではジョーとニーナ、ニーナと母親などそれぞれが重なるように演出されていて、どこまでが虚でどこまでが実なのか考え出すとクラクラする。
でもそれでいえば最初から全てが主人公の観ている悪夢のようでもあるし、何なら本当の主人公はあの少女で彼女の物語においてホアキン・フェニックス演じるジョーこそがメタファーなのかもしれないとも読める。その逆も然り。
ジョーはニーナを助けていない。あの二人の間に強烈な結びつきを示す映像表現の一方で最後までお互いに物理的な影響を与える場面がない。
ラストシーンで示される"不在"に対して開かれた解釈にゾッとする。とっても上品に、それでいてスリリングにこっちの想像力を掻き立てる。余白に深い闇がある。

▼ジョニー・グリーンウッドという劇伴作家の印象
ジョニー・グリーンウッドというブロークンな劇伴作家の使い方もとても上手い。レディオヘッドにかぶれだした大学時代にジョニー・グリーンウッドの名前だけで借りたノルウェイの森のサントラが音楽的快楽の真逆を行くような音像でわけわからんくてビックリしたのを思い出した。
彼は映画音楽をやる際は途中から始まって途中で終わることを意識して音楽を作るらしく、その性理に逆らう暴力性みたいなものが本作の内容や手法とも噛み合っているのかなと思う。

何にせよ「完全にヤラれてしまった」という表現がピッタリのショッキングな映画だった。
最近高評価ばかりですっかり陳腐化した言い回しになってしまったけど、これまたベスト10級の一本。

★★★★★★★★☆ / 8.5点

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