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映画レビュー:No.719 君の名前で僕を呼んで(原題「Call Me by Your Name」)

君の名前で僕を呼んで
132分 / イタリア、フランス、ブラジル、アメリカ / PG12
公開:2017年11月24日(日本公開:2018年4月27日)
監督:ルカ・グァダニーノ
出演:アーミー・ハマー
ティモシー・シャラメ
マイケル・スタールバーグ
アミラ・カサール






この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。




あくまでブログは自分のために書いているけれど、一番書いててよかったなと思うのはウェブ拍手をもらったときです。

▼1回目ぼーっとしてたんで二回観ました
一度目に観た時集中力に深刻な問題があったのか一から十まで全くピンとこなかったのだけどツイキャスの課題作品になったのでここぞとばかりに既得権益を行使して系列館でスタッフ鑑賞した。
今回はちゃんとこういう映画かってのがわかりました。正直これでもダメだったらどうしようかと思った。

▼恋愛感情を自制するという事の難しさ〜誰でも共感できる負荷
二人が惹かれ合いながら自制する繊細な恋愛プロセスがとても丁寧に積み重ねられる。社会的、宗教的に同性愛への抑圧が内面化されている時代背景がむしろ彼らの感情の切実さを際立たせている。
自信家で大胆な性格のオリヴァーが恋愛になると理性的で、臆病なエリオはむしろ直情的ってあたりも面白かった。もちろんそこにはより社会的立場にあるオリヴァーだからこそ感じる抑圧への恐怖もあるんだろう。

エリオの方が恋愛に対する向き合い方がピュアで、タブーを恐れない一方初めてのことに対して純粋に戸惑う。
オリヴァーに自制を促されてユダヤの六芒星をつけてみたり、女の子に手を出したり、相手の望まない結果を求めないよう一生懸命目をそらそうとしているのが青くて苦い。
彼らが自分の恋愛感情を殺す努力をするところに生まれる「そんなことする必要ないよ!」って心苦しさはこの映画の観客に対する負荷=面白さの大きな肝で、その先には突き詰めれば誰かに愛し愛される実感が人生には必要だというとても普遍的な話がある。
誰かを好きになることやその気持ちに答えてもらうことの幸せは誰にも否定できないよ、当たり前だけど。なぜなら自由恋愛は誰も傷つけないから。

▼恋愛に自閉しない結末〜経験の肯定と他者という救い
フランスの小説にある「話すべきか死ぬべきか」という一節について話す場面など隠喩的なやり取りが序盤から多い。
エリオは小説の登場人物は「核心を避けて話した」と言うけれどそれはそのまま二人の恋愛へのアプローチとも重なる。中心にいる二人に限らず周りにいる人もみんなそうやって核心を避けて話している。それは決して後ろ向きなことではない。

僕がこの映画は恋愛に自閉した物語になっていないところが良いなと思う。
二人の関係=恋愛の行方に結論があるのではなく、傷つくこともまた人生の一部という極めて現実的な成長にテーマがあるからより普遍的で大人な余韻がある。
人生は一度しか無いからどんな経験も尊い。オリヴァーと別れたエリオの喪失を理解してくれる家族や友人の存在は、その時にはそのありがたみがわからないかもしれないけれど振り返ったときにとても大切な救いになると思う。
映画の中で描かれる通り、大概の恋愛関係は常に終わってしまう可能性をはらんでいるけれど友情は終わらそうと思わない限り一生続けられる。家族もまた然り。僕は恋愛至上主義的な人生観があまり好きじゃないから、オリヴァー以外の人のエリオを見つめる視線にこそグッと来るものがあった。

▼生きていく上で喜怒哀楽のどれか一つだけを殺すことはできないということ
じゃあどこでどうしていたらこの結末が避けられたのかというと答えが出ないところがこの映画の上品なところで、結局人ひとりにできることといえば常に寛容であることで他者の可能性を否定しないことくらいなのだと思う。それが結局は自らにとっても生きやすい社会を作っていくと信じるしかできない。
この映画は物語の悲しさとは無関係に優しい世界という印象を残す。それがせめてもの希望だと思う。
まあどこまで行っても他者ってのは人生に欠くことがない。だから恋愛は尊いし、逆に恋愛がなくたって人生は素晴らしいということも否定していない。
色々な見方があるだろうけどラストに向かうにつれて過ぎ去った季節をグッと俯瞰する大人な視線がとても良かった。エリオくん、今は辛いだろうけど君はきっと大丈夫だ。

★★★★★★★☆ / 7.5点

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