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映画レビュー:No.715 万引き家族

万引き家族
120分 / 日本 / PG12
公開:2018年5月8日
監督:是枝裕和
出演:リリー・フランキー
安藤サクラ
松岡茉優
樹木希林
城絵吏
佐々木みゆ







ネタバレはありません。




「えっ!けんすくん映画観て泣いたりするの!?」とよく言われる。

▼題材からくる一定のドライな手触り
いやあ、主人公一家の万引きが下手で物パクるシーンはどれもめちゃめちゃドキドキした。スキルより佇まいを磨いてくれ。バッグ下ろしたりキョロキョロしたり挙動がいかにも何か盗みそうすぎる。
とまあそれは冗談半分なのだけど、それも含めてとてもこの生活が長く続くはずがないという破滅の予感がファーストシーンからとても強い。全体的にホープレスでドライな空気を醸していて、そこは終始一貫している。

この映画は主人公一家の生き方を否定しない一方で決して肯定もしていないように思う。感情移入で映画を観る人には作品が何を言ってるのか全然わからないんじゃないか。
「この人達にとっては」という家族の在り方を描きこむ中で見えてくる一人ひとりの欠落やその折り合いの付け方には理解も共感もできる。映画なのだから描写にはもちろんそういう機能がある。
でもこの物語において理解とか共感っていうのは何の解決にもならない。だからこの映画にそういう視点から良かった悪かったの感想を言うのはとても危険だと思う。

▼豊かさの中にある"正しさ"の不寛容
最近の社会からはスキあらば敵を作って攻撃しようとする不寛容な空気をとても強く感じる。
別に誰も損したり傷つけたりしてないんだからいいだろうってことに"正しさ"を振りかざしてズカズカと叩きに行く風潮がとても苦手。そういう人は自分と違う価値観を否定しないと死ぬ病気にでもかかっているんだろうか。
主人公一家は「法を犯した」という意味では悪いことをしているのかもしれないけれど、それは彼らの間にある結びつきまで否定する理由にはならない。
映画の終盤で主人公一家は"社会"にさらされて"正しさ"で断罪される。映画を観てきた観客は少なくとも彼らのことを知っている。どんな人生を送ってきたのか、どんな生活をしているのか。それが彼らにとって幸せだったのかどうか。
彼らのことを何も知らない、知ろうともしない人たちに表面だけを見てあの一家を断罪する権利はあるのだろうか。自分の"正しさ"を信じて疑わない人たちの方が僕にはよっぽど暴力的で悪質に見える。

▼今までにない関係性の形を考える
子供産めば母親とか、血縁があれば家族とか、無条件で性善的な関係が成り立つという幻想はとっくに終わっている。そんなことはニュースを見てればすぐわかると思う。
例えばLGBTQもそうだし、今まで名前のなかった関係性に光が当たるようになってきた。それを新しい形として受け入れられる社会のほうが、結局自分も生きやすくなると思うんだけどな。
パルムドール受賞の影響からか僕の観た回ではいつもの是枝監督作とは違った客層のお客さんもたくさん入ってる印象だった。この映画を観て「こちらから見りゃサイテーな人だがあんなんでも誰かの大切な人」という想像力を持てる人が一人でも増えれば良いなと思う。

僕はもっと愉快な映画が好きなので全体的に閉塞感の強い今作は好みとしては特別好きな映画というわけではない。
どんな自然な場面にも常に結論を見つめる視線を感じてしまうのは是枝作品を内面化しすぎかな。よく出来た作品ばかり撮ってると僕みたいな穿った見方しかできないめんどくさい人も相手にしないといけなくなるから大変と思う。
でも、やっぱ鋭い映画だよ。流石だ。

★★★★★★★ / 7.0点

あと作品の感想について賞の結果を引き合いに出すコメントについていつも思うんだけど「流石パルムドール!」とか言うのはコンペ出品作全部観てからにしたほうが良いと思うよ。


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