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映画レビュー:No.720 オンリー・ザ・ブレイブ

オンリーザブレイブ
134分 / アメリカ
公開:2017年10月20日(日本公開:2018年6月22日)
監督:ジョセフ・コシンスキー
出演:ジョシュ・ブローリン
マイルズ・テラー
ジェフ・ブリッジス
テイラー・キッチュ
ジェームズ・バッジ・デール
ジェニファー・コネリー






この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。




「力(ちから)」っていう字をカタカナのカと同じ形にしたやつとは多分友だちになれない。

▼実録物らしからぬ楽しみ方をしたという話
ある有名な山火事事件があってそれを中心にサスペンスを描く話なのだと勝手に思っていたのだけど、かなり長いタイムスパンで端の人物まで丁寧に描く構成の物語だった。
実話ベースなので結論に向かっていく話なのだけどそのドラマに映画的必然を加える脚本や演出に安定感があって、割と序盤から「これは多分大丈夫な映画!」と信頼して観れる。
僕は物語のベースになっている出来事を知らずに観たので一体どこでどの方向に盛り上がっていくのかさっぱりわからず終始いたく感心しながら観るという、実録物らしからぬ楽しみ方をしてしまった。

▼山岳消防隊の映画との相性の良さ
まず山岳消防隊の仕事っぷりがとても映画的で面白い。
単純な話なのだけどお仕事ノウハウという特殊技術と目からウロコの落ちるロジック描写、肉体的演技=アクションを求められる職業という、言ってしまえば誰にとってもわかりやすく普遍的な映画的面白さが担保されているので設定の時点でかなり映画と相性が良いのだと思う。

▼よく出来た脚本
何よりそういうディテール一つ一つがきちんと脚本として映画の物語にまとめられていて、単に表面的な面白さに甘えていないところがとても良かった。
冒頭から彼らのキャラクターに関して彼らのチームがホットショットという精鋭部隊よりは弱い立場だということ、でも実力はあるということ、そしてジョシュ・ブローリンがその中でどういう人物なのかということなど、映画の必要な情報をめちゃめちゃ端的に説明している。
仕事描写にしても繰り返される防火テントのくだりや上空から水をばらまく飛行機などちゃんと後々効いてくる要素をしっかり観客に印象づけてて上手い。

▼主役二人を対照的に見せる構成の妙
構成で言うとマイルズ・テラーとジョシュ・ブローリンのキャラクターは並列の語り口で一貫していて、主に彼らの仕事以外の日常の描写はそれぞれ別々のドラマとして描いている。
対照をなすキャラということを構成でもきちんと見せていてこういうところも観客に物語をデリバリーする配慮が効いていると思う。
ダメな奴として登場するマイルズ・テラーをちゃんと好きになっていくし、頼もしかったジョシュ・ブローリンの完璧ではないところも見えてくる。
クライマックスから結末に関してもそうやって積み重ねてきたものにドラマ的必然性があって、だからこそ出来事それ自体のショック以上のエモーションが観客にドシンとのしかかるようになっている。

▼水準の高いサスペンスを描いていること
特に彼らの根底にある"不安"が描けているからこそ山火事現場の緊張感が常に保たれていて、それは観客にもしっかり「火、怖い!」という感情を植え付ける効果がある。
自然災害と人間ががっぷり四つに組み合って戦う話を描くのに決して愚か者のせいで大変なことになるような安易なマッチポンプを使わないのがとても良かった。
最悪の最悪の最悪を想定してもなお自然は怖いものだというとても高水準な緊張感がある。
特に火が回る速さを実感させる表現はとても素晴らしかった。

▼「見守るしかない」というクライマックスの設計
「見守るしかない」というクライマックスは我々観客の立場と一致するとても映画的な場面設計で、一人前として仕事を任されたゆえに一人生き残るという皮肉もドラマツルギーとして効果が大きい。
序盤から繰り返される防火テントのモチーフに対して「ああなるほど。究極これでやり過ごせば生き残れはするんだ。シンプルだけどすごいな。」と思って観る一方で、いくらなんでもアナログだし簡素すぎると心配に思ってしまう部分がある。そして実際本当にそれを使わないといけなくなったらどうなるかというと、やっぱりその懸念が現実になる。
実録物でしか中々描けない出来事だからこそ命の重みがとてもズシンと観客に響く。その重たい余韻にこそ彼らの危険な仕事に対する尊さと敬意が詰まっていると思う。
生き残った彼の視点にしても隊員の死を知って慟哭する場所がちゃんと序盤と対比になるバスの後部座席という描写になっていてグッと来た。

よくまとまった一貫性のある物語で134分の長さは全然感じなかった。
周りの評判で観に行くことにしたけど良い拾い物。結構誰が観ても面白い作品だと思う。

★★★★★★★☆ / 7.5点

↓拍手!プリーズ!

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