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映画レビュー:No.721 ブリグズビー・ベア

ブリグズビー・ベア
97分 / アメリカ
公開:2017年7月28日(日本公開:2018年6月23日)
監督:デイヴ・マッカリー
出演:カイル・ムーニー
マーク・ハミル
グレッグ・キニア
マット・ウォルシュ
ミカエラ・ワトキンス
ジョージ・レンデボーグ・Jr
クレア・デインズ








ネタバレはありません。


ネタバレを気にするならツイートなんかするな。

▼創作と創作物の関係~虚実の豊かな影響
カルチャーギャップをやるにはかなり美味しい設定のはずだけど劇中の出来事に準じてか演出のトーンはコメディ抑えめ。テンポで笑いを狙ってるところはあるけど全体としてオフビートコメディの色は思ったより弱かった。

「想像力を羽ばたかせること=現実逃避」と「地に足の着いた実人生」が二律背反ではなく相乗関係なんだと示してくれる主人公にとっての創作の描き方がとても良かった。
彼が「なぜ自分の中にブリグズビー・ベアという物語があるのか」に向き合うことが創作と創作者という虚実双方に豊かな影響を与えていて、自己表現にかぶれる人生を肯定している。
自分の好きなものから受け取ったポジティブな影響を「やってみたい!」という動機に代えるっていう初期衝動の基本の「き」!みたいな話だけど、だからこそ結果の善し悪しではなくてトライする姿勢の清々しい純粋さが好意的に感じられるようになってる。

▼画面の外側にあるハードな現実
主人公の人生を思うと画面で描かれている出来事の外側にこそ切実さやハードな現実があるように思う。
だからこそブリグズビー・ベアという作中劇やそれによって起こるポジティブな波及が主人公の願望や妄想のようにも見えるし、何にせよそれが虚であれ実であれ彼はその自己発見やクリエイティビティによって自分の世界を広げ続けている。
彼はブリグズビー・ベアという作品の世界観と向き合う中で無意識的に自分の人生を客観視していて、だからこそただの現実逃避ではなくちゃんと人生の困難ともコミットしていく物語になっているのがとても良かった。
個人的にシング・ストリートの創作の描き方がすごく近いと思う。

▼「主人公の物語」という視点の一貫性
そういう「主人公の物語」という部分は最後まで一貫していてクライマックスに「こんなに素晴らしい作品を作りましたよ!」というお為ごかしな映画の嘘をつかないのもとても上品。
根拠のない自信や無邪気な動機というある意味怖いもの知らずだった主人公が"結果"という他者と関わることで発生する責任や重圧と向き合うようになるところに成長を持ってくる構造はとても誠実だと思った。
目一杯表現したものを人に観られるのは怖い。それを否定されたら自分の全部が否定されたような気持ちになる。彼がそういう物を見つけられたことも、それを通じて繋がりを持てたこともすごく良いことだ。
彼は何より初めて自分で自分の事を認めたのだと思う。居場所が見つかってよかった。

▼好きなものを通じて得る自己発見
この映画の主人公ほど代替不能な関係性でなくても自分の好きなものが自分にとってどういう意味を持つのかを考えることはとても重要で、僕はそうやって自分が何者なのかわかるようになってきた感覚がある。
無条件で誰かから認められるなんて虫のいい話は無くて、だからこそ自分で自分が何者なのかくらいはわかっておかなければいけない。
アイデンティティの確立というか「俺はこういう人間だから」っていう芯の部分というか、要するに他人の目に左右されない部分があるかどうかということ。そうじゃなきゃ自信も持てないし自分が本当に好きなことを見逃してしまう気がする。
「何者かになる」と言うと社会的立場を獲得するとか絶対的成果を上げるとかそういう大きな結果じゃなければ得られないことのように感じてしまうけど、例えば昨日観た映画の感動を誰かに話すとかそういう身近な"表現"にも常に自己発見は含まれていて、だからこそ僕は映画を観てこうやってブログに色々書いているんだろうなとかそんなことを思った。

★★★★★★★☆ / 7.5点

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