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映画感想:No.1050 ファベーラの娘(原題「Pacificado」)

ファベーラの娘
100分/ブラジル・アメリカ合作
公開:第16回ラテンビート映画祭にて上映
監督:パクストン・ウィンターズ
出演:カシア・ジル
ブカッサ・カベンジェレ
デボラ・ナシメント




この感想はネタバレを含みます。ご了承ください。




マッチングアプリで出会ったことを金に物を言わせて作った恋人と表現する友人D。

▼ラテンビート映画祭の尋常ではない満足度
ラテンビート映画祭での鑑賞はこれで4作目になるのだけど本当にどの作品も印象的で満足度が高い。

▼映し出されるファベーラの現実
舞台や内容は全然違うけれど、同じ日に観た『猿』同様に環境によって人生の選択肢を持たないまま早くに大人にならなければならなかった少女の物語で、辛いばかりの人生に何とか意味や希望を見出そうとする姿がとても切ない。
ファベーラはブラジルのスラム街のことで、主人公の暮らすエリアもギャングの縄張りで治安が悪く、ドラッグ中毒の母親との関係だったり生活の近いところに犯罪がある。
彼女は自分が何者でもなくなってしまうことを恐れていて、自分の父親がギャングのボスだった人物なのではないかという事に固執している。
ボトムのようなファベーラの中で一生を過ごす典型的な貧困層の住人になりたくないと思っているけれど、現実はどんどん彼女を追い詰めていくのが苦い。

▼暴力の力学で動く世界
彼女の見つめる世界の物語と並行して服役から戻ってきた元リーダーと新リーダー率いるギャングのしがらみが描かれる。
公権力や他のエリアとのギャングと衝突することで力を誇示しようとする現リーダーに対して奪い合いではなく妥協点を探すように諭す元リーダーがどんどんと暴力的な力学によって立場を弱くしていく。
争いは犠牲が出る。ファベーラはそういうやり方でしか生き残れない場所だったことも伝わってくるのだけど、一度外から見たことで元リーダーはその在り方の限界を知っていて、何とか自浄を図ろうとしている。

▼丁寧な脚本の構成
彼女の日常が少しずつファベーラの理屈に蝕まれていくのを段階を踏んで見せる脚本の構成もとても良くて、映画的にも彼女の輝きがどんどん鈍っていく。
伏線の回収もとても丁寧で、別の地域でドラッグを買うことによるリスクについての話や本当に自殺したいならという会話など、言葉で聞いていたものが実際に出来事として起きたら想像していたのより何倍も怖いという描き方になっているのも緊張感があって良かった。
警察の取り調べの感じ悪さなど事務的仕事の極みみたいな捜査がフレッシュ。仮にも正義を行使する立場の人間がやることじゃないだろう。めちゃめちゃ厭な気分になった(褒めてる)

▼ロケーションの力
ロケーションもある意味で登場人物のような重要性を持っている映画で、実際のファベーラの街並みが醸す空気が映画の強度を高めている。
おそらく本当に映画で描かれるような治安の悪い地域なんじゃないかと思うんだけど、だからこそのリアリティがあって一つ一つの場面が異様な緊張感に満ちてる。
自分たちのいる場所の向こう側に別の世界があるようなパノラマの映し方など、絵的にもとても豊かで印象的だった。


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