放談主義

映画感想:No.1188 暗数殺人(原題「Dark Figure of Crime」)

2020/09/14
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暗数殺人
110分 / 韓国
公開:2020年4月3日
監督:キム・テギュン
出演:キム・ユンソク
チュ・ジフン
チン・ソンギュ
チョン・ジョンジュン
ホ・ジン




この感想はネタバレを含みます。ご了承ください。




ツイッターで人のいいねがタイムラインに流れてくる仕様、精神衛生に非常に良くない。やめてほしい。

▼主人公と犯人の動機を巡るミステリー
証言を二転三転させる犯人とそんな見え透いた信用できなさをわかっていて振り回される主人公の対立という、双方に「なぜそんなことをするのか」というミステリーが強い物語。
一見すると両者ともに非合理だしなんなら話の都合で物語を複雑にしているだけなのか?と疑いたくもなる展開が続くのだけど、そこは実録物だけあってきちんと地に足のついた人間的動機に集約されるのが良かった。

▼警察組織の抱える欺瞞と限界
世の未解決事件、もっと言えば事件としても扱われずに潜在化してしまう犯罪にも被害者や加害者がいて、それが見過ごされ放置されることの背景には警察組織の成果主義が抱える構造的な欺瞞や限界がある。
主人公はそんな警察組織で出世コースから外れたはぐれもので、だからこそ目の前の実績ではなく事件の解決という本質に向き合う気骨のある人物。だからこそ犯人も彼を利用しようとするし、そんな彼の執念と正義感が真相解明の突破口を開く展開も熱い。

▼犯人の証言ありきで進む困難な捜査
ミステリーとしては風化しかけて物的証拠を見つけるのが困難な事件に対して信用できない犯人の証言を「信じながら疑う」ことでしか前に進めない推理がもどかしくも面白い。ここまで信用できない語り部だとわかっていながら乗っかる展開も珍しいと思う。
犯人が本当のことを言ってるわけが無いのだけど、その中に真実(のように感じられる要素)を散りばめる塩梅が絶妙で、だからこそ主人公も犯人に信憑性を感じる。
ひたすら手玉にとられ、翻弄される刑事が藁をも掴む思いで見つけた証拠が肩透かしに終わる展開などは彼の上司と同じく観客も「やっぱりな...」と思ってしまうのだけど、彼を嘲笑う犯人や事件に向き合わない他の警察は共に事件で傷つき時間が止まってしまった人たちへの想像力が欠如していることが最後には違いとして表れる。

▼映画的演出や構成によるストーリーテリング
犯人のテオをガラスなど遮蔽物越しに捉える撮影が多用されていて、彼の表面的な印象の奥にある底の見えなさを画面的にも表現している。
事件が起きる場面を具体的な絵にしてしまうことは作劇の一貫性を失する危険性もあると思うけど、犯人がさしたるイデオロギーもなく人を殺すという凶悪さや罪なき被害者の存在など、数字や情報で片付けられる犯罪の実態が具体的になることで観客の想像できる距離感にグッと近づくのが個人的には効果的だと感じた。

▼卑近な悪と愚直な正義
わざわざ主人公を面会に呼び自白を始める犯人の支離滅裂な行動は警察を振り回して悦にいるソシオパスのようにも映る。
腹立たしくもありながら引き込まれてしまう映画的な説得力があるのだけど、そうやって事件を消費して楽しんでいる観客側にもその裏側にある痛みに想像力を持てと突きつけるような結末でとても誠実だと思う。
同じ実録物の『殺人の追憶』もそうだったけど「忘れる」ということは犯人を赦すことと同義だというメッセージは重たい。
人間的な卑劣さ、卑近な悪の在り方と、その対象として愚直なまでの正義の信奉が描かれていてとても良かった。

あと、『FYRE 夢に終わった史上最高のパーティー』、本作と劇中でゴーンガールのスコアが使われてるのはなぜなんだろう。
権利関係的に使いやすかったりするのかな?
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