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2017

映画レビュー:No536 縞模様のパジャマの少年(原題「The Boy in the Striped Pyjamas」)

縞模様のパジャマの少年
95分 / アメリカ、イギリス
公開:2008年9月12日(日本公開:2009年8月8日)
監督:マーク・ハーマン
出演:エイサ・バターフィールド
ジャック・スキャンロン
アンバー・ビーティ
ヴェラ・ファーミガ
デヴィッド・シューリス








この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。






その昔に他損事故もらって全額相手持ちで差し歯にした前歯が最近やたら痛むんだけど再治療は自腹なのだろか。

▼ホロコースト物というデリケートな題材~ドラマとしての作為
普通のジュブナイル物かと思って観始めたら第二次大戦下のドイツの話で戦時中の雰囲気の悪さが終始いやーな感じだった。
個人的にはオール英国人でゴリゴリの英語劇で語られる戦争の(ホロコーストの)"罪"がドイツに集約されている事に何となし気持ち悪さを覚える。
健康な人の描く難病物とか若者の描く皮肉な老人描写とか、そういうのに似た欺瞞の臭いっていうのかなあ。うーん。

ホロコーストというデリケートな題材だからこそドラマとしての"わざとらしさ"をどこまで許容するかというのは難しい。
例えば本作で物語に必要な対立を演出する主人公の母親のキャラクター。登場人物に虐殺をひどいと言わせるのは簡単だけれど、第二次大戦下のドイツ人でしかも軍人の妻がそれを言うとなるとかなり違和感がある。
主人公に対してモラル的な観点から現実を隠蔽するのも"裏庭"をめぐるサスペンスを細かい部分で盛り上げるのも彼女の存在一つで成り立たせているんだけどそれが上手いのかわざとらしいのかは僕にはわからない。
この映画の中であの奥さんが主人公を怪しむべきポイントはたっくさんあったと思うんだよね。裏庭に行きたいって相談されたり、裏庭歩いてるとこ見つけたり、ボールはどこにあるのか聞いてきたり、カバンの中身を見せない不自然な態度だったり、パッて見た時に庭のブランコにいなかったり、この映画の中で彼女が見ている情報だけでも充分点と点を線で結べるだけの要素が揃ってると思う。それが最後の最後まで主人公がいない!ってなって延々家の中を探したりするような行き当たりばったりな演出しかされていないのが個人的には映画にとって都合良くキャラクターを動かしているようでモヤンとした。
逆にユダヤ人の元医者のおじいさんだったり家政婦さんだったりは印象的な場面で登場する割には最後まで観ると大した役割がなくてそういうところもちょっとバランスが悪く感じる。

▼主人公周りの演出
主人公の描写にしてもあんな遊ぶところが無さそうな家を何回も長時間留守にすれば誰かしら気づきそうなもんなんだけど、結局最後の最後まで彼が家の敷地の外に行ってたという事を誰ひとりとして勘ぐりもしないと言うのは不自然だと思う。
他にも彼が一度友人になったユダヤ人の少年シュムールを裏切ってしまうところなんか違和感だらけで、あの主人公の裏切りはひどいしそれをシュムールくんがあんなあっさり許すのもあんまり理由が見えない。何よりシュムールくん怪我して無さすぎ。あんなんじゃ済まないっしょあの時代のユダヤ人に対するドイツ軍人の折檻って。だからこんなゆるゆるな描写にするなら単純にこのシーンいるのかなって感じだった(一応ラストの展開には繋がるんだけど)。
ラスト近くの「主人公がサンドイッチを落とす」っていうところとかも本当に都合のいい伏線以外の何物でもないんだけど、そのために主人公の好感度がモリモリと下がるのはなんというか本末転倒という感じだ。
逆に彼が何もわからないがゆえにユダヤ人のシュムールくんを傷つけてしまうというのは映画として鋭かった。悪意のない悪ってのが一番悪いと思うんだけど、それをイノセントな子供に根付かせる大人の事情なんてクソ以外の何物でもない。

▼映画の中の戦争に対する価値観の描き方の違和感
主人公の祖母や主人公の母親、中尉の父親をめぐるドラマやそれを受けての主人公の姉の変化など、含みを持たす程度のものも含めて映画の中に戦争に対して否定的な視点が結構多いんだけど、その役割は主人公の世界の見つめ方を通じたアイロニーに集約しても良いんじゃないかと思った。
登場人物がストレートに戦争教育や愛国精神を強要すると主人公が"何も知らない"という物語にとって一番肝になる構造を保つのが難しくなるからかもしれないけど随分今っぽい物の見方をする世界だなと感じてしまった。

主人公と鏡の存在としてのユダヤ人の少年シュムールくん。彼もまた大人の欺瞞的な優しさで戦争の具体的な現実を知らないからこそ主人公に結構ひどいことを言われても自分の言葉で言い返せないのかと考えると辛い。
クライマックスで主人公が柵の内側に入るまでは何をどうしてもあの二人が対等な関係に見えないのがこの映画の描写で一番鋭く感じた。

★★★★★☆ / 5.5点




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