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2017

映画レビュー:No.542 スプリット

スプリット
117分 / アメリカ
公開:2017年1月20日(日本公開:2017年5月12日)
監督:M・ナイト・シャマラン
出演:ジェームズ・マカヴォイ
アニャ・テイラー=ジョイ
ヘイリー・ルー・リチャードソン




この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。




最近CDプレイヤーがほしい。

▼サスペンスとして要素が線にならない脚本
シャマランに関しては遠い昔に「シックスセンス」を観たなあって事が泥酔状態の運転の記憶くらい不明瞭に残ってる程度で、それもシャマランのシャの字も知らないような、ちゃんともろもろ意識して映画を観るようになるずっと前のことなので実質本作がヴァージン卒業作品。

去年から印象的なサイコパスの登場する映画やそれを含めて暴力的なプロット、「こんな目に遭うのは嫌だなあ」っていう物語をバリエーションで楽しむところがあったからこの映画も「3人vs23人格」ってキャッチコピーの時点から結構楽しみにしてた...んだけども結論から言うと「3人」でも「vs」でも「23人格」でもねえ!って所が一本の映画として非常にモンヤリした。

冒頭わけも分からず拉致られる主人公達同様に「なぜ拉致られたのか?」「それも含めて主人公は何がしたいのか?」「マカヴォイはそもそも何者なのか?」って疑問が映画の強力な牽引力になるんだけど、それらの謎解き、っていうか真相解明が主人公たちの起こすアクションと全く関係ないところで行われる。具体的には多重人格のマカヴォイが自我をコントロールして社会生活を送れるようにしてくれるばあさんがいるんだけど、大切なことは全部そっち側のやり取りで明かされちゃうっていう。
ビックリすることに拉致した件と最終的にビーストが目覚める件、全然関係ない。だからマカヴォイは基本的に女の子たちに何もしないし、何をしたいのかもわからない。
そうすると女の子側のアクションで物語を動かさないといけないんだけどこっちはこっちで主人公の女の子のバックボーンを匂わせる意味ありげな回想シーンを序盤から結構しつこく積み重ねる割にその設定が本筋のサスペンスと全然うまく噛み合わないっていう。あの子が能動的にドラマに絡む余地はめちゃめちゃあったと思うんだけど、最後まで観たら「たったこれだけのために...トホホ...」と息が抜けるくらい大半の場面で設定が全く活きてこない。
つまり事情を知ってる密室の外側のばあさんが全部説明してくれるから「3人」じゃないし、主人公が彼女だから気づけるような突破口を見つけてマカヴォイと渡り合うわけでもないから「vs」でも無い。
設定一つ一つは面白そうなのに脚本がサスペンスとして要素を一本の線にできてないから物語が積み重ならないというか終始空振ってる感覚だった。一応打つ気はあるんだな、みたいな。

▼物語を動かす登場人物の行動のわざとらしさ
主人公の女の子達とマカヴォイの駆け引きはって言うとそもそも普段からろくすっぽ頭使わない女の子って設定から生まれる一か八かすぎる展開ばっかりでリスクの考慮が足らなすぎて「お前らの考え無しな行動のせいでいちいちドキドキしなくちゃいけないこっちの身になってくれ!」と段々イライラしてくる。
端的に目の前のサスペンスを作為的に作り過ぎなんだと思う。例えば割と最初の方で女性の人格と初めて対面するとことか、ドアの隙間から覗くと服だけ見えて首より上が見切れてるから女の子たちが「さっきの男と別に女の人がいる!」って勘違いするんだけど、後のシーンだと普通にドアの隙間から全身見えたりするっていう。
主人公にしても序盤から一緒に拉致された他の二人とは違うって感じで演出されてるけど結局「お前も意外と考えなしだな!」って感じだしあの子も最後まで自力では何もできてない。彼女ならではの視点からマカヴォイを掘り下げるような展開をもう少し考えれよ。全部密室の外でばあさんが言っちゃうんだもん。
バカな女の子が逃げようとしたりってのは一応その場その場で盛り上がるような作りとは言えるかもしれないけど一本の映画の脚本の作りとしてはサスペンスの描き方が行き当たりばったりでずさんだと思う。とても本気で逃げようとしてる人を描こうとしてるとは思えない。

▼その他雑感とまとめ
23人格に関しては割と序盤から「このテンションで23通りきちんとさばけるのか!?」と思ってたら実働は8人格くらいでさばけないどころかさばく気すら無かった。大風呂敷!
エンドクレジットすら8人くらいしか載せない始末よ。まあここはご愛嬌というか「おい!」ってツッコむのが楽しい部分ではあるんだけど。

あとこれはオチになるけど、私有地じゃなかったら逆に疑われない?笑
あそこがどういう目的であんなにプライベートな使い方されてたのか全然わからなかったんだけど。

重ね重ね設定としてはめちゃめちゃ面白くなりそうなんだけど一つ一つの設定が全然噛み合わないから話が積み重ならない。なんかネタバレ云々で論争っぽくなってるけど単純にこの映画単体で脚本が上手く行ってないんだと思う。
サスペンス的な引っぱりよりは新しい事実が発覚する場面、つまり話が前に進む時の「えっ!?そういう方向に行くの!?」って驚きが面白い作品だった。

★★★★★★ / 6.0点


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