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2017

映画レビュー:No.566 ディストピア パンドラの少女(原題「The Girl with All the Gift」)

ディストピア パンドラの少女
111分 / イギリス
公開:2016年9月23日(日本公開:2017年7月1日)
監督:コーム・マッカーシー
出演:セニア・アヌマ
ジェマ・アータートン
パディ・コンシダイン
グレン・クローズ







この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。



足底腱膜炎になった。感じが5文字以上並ぶとなんとなしカッコイイよね。(バカ)
骨の脱皮が上手くいってないとなるらしいんだけど「骨の脱皮が上手くいってない」という文字列に何一つピンとこない。

▼前情報なしのススメ
「ディストピア」ってまたスケールのデカいタイトルだなあと思ったら案の定邦題だった。原題は「The Girl with All the Gift」。
なんかぽっと出の天然素材な有色人種なヒロイン像って映画覚えたての頃に邦画でもハリウッドでもない映画を観て新鮮な気持ちになってたのを思い出す。
僕は普段から映画の情報に関してはかなーり強めに自主規制しているけど、この映画は元々ノーマークだった事もあってたまたまどこかでどういうジャンルの映画か知ってしまっていたのがとても惜しかった。どんな映画か知らないで観たらめちゃめちゃ楽しかったと思う。

▼冒頭の引き算演出~お約束に逃げない設定の説明の巧さ
「ディストピア」というタイトルだけあって冒頭から地下シェルターに拘束具と自由も平等もない(つまりとっくに"平和"というものが失われた)終末的イメージがモリモリ展開される。物腰穏やかで思慕=情愛のある子どもっていう、言ってしまえば映画における無償の善玉属性のはずのキャラクターがとんでもなく恐れられ、それゆえに迫害されている。大人に、それもゴリゴリの軍人たちに。
この冒頭周りの絵で見せる異化効果のアイデアがとにかく光っていて、物語に必要な情報の公開っていう序盤の段取り重視なシーンも凄くスマートに面白く見せる。特にジャンル映画として世界観(≒ルール)の説明っていうのは必ず必要なわけだけど、そこでジャンル映画ですっていうお約束とか定石ではない方向から描こうとする姿勢は凄く好感を持った。
だからジャンルとか知らないで観たら序盤はどういう映画なのかわかるまでとにかくワクワクすると思うし、ジャンルにおける個別のアイデア(ルールの設定)も「面白いこと考えました!」って自信が満々で良かった。「ツバをペッ」とか「歯をカチカチ」とか「ジェルを塗る」とかまあ面白い。手枷足枷の前にマスクを付けるべきだとは思うが。

▼中盤以降のスケールダウン、中だるみ感
とは言えやっぱり超ド派手なアクションシーンとかバーンと大見せ場が展開するような規模の映画ではないから、カタストロフが起こって以降はどうしても局地戦の連続になってしまって、そのどれもが新鮮かと言うと正直お約束だねってとことか「えっ!大丈夫なのかよ!」ってご都合を感じるシーンとかままある。要素が回収されなかったり、されたとしてもそんな広がらなかったり、冒頭の切れ味に対して中盤以降はちょっと語り口の選球眼が鈍っていく感があった。
イメージはあってチャレンジはしてるけどどうしても地味だったり弾けなかったりするのはある程度しょうがないし、期待値からすれば全然楽しいレベルだとも思うんだけどね。
ただ例えば敵の襲ってき方とか、対するこちらの殺し方とかにもっとバリエーションがあるとなお良かったのかな。現状ちょっと図式的で工夫がない。

▼物語のテーマ的部分
ゾンビをゾンビと言わない問題どころか本作の場合ゾンビについて物語内でやたら理屈っぽい生物学的考証がつくので、「あーもう、そういうまどろっこしいの抜きで行けるのがゾンビの強みだろ!」ってストレスを感じたりするんだけど最後まで観るとそこにしっかりした必然性があって感心してしまった。
言ってしまえば本作は種族としてのゾンビを描いてる。もっと細かく言えばゾンビ物というよりパンデミック物に近い。
世界の支配者だったヒトという種が黄昏を迎え、より上位の種の世界が始まる。特異的存在の主人公の視点から見てると割と最初から人間による人間のための行動がどれも思い上がった利己的な選択に映るんだけど物語もどんどんその部分にストレートに集約されていく。
感情移入の対象となる女の子が猫とか鳥とか身も蓋もなくボリボリ食ったり犬をオトリに使ったりする絵面は穏やかじゃないんだけど、僕達だって生きるために生き物を殺して食べるし本質的にはどちらも生のサイクルの中にあるだけだ。強い立場の行為は常に問答無用で、それはやっぱり身に迫ると怖い。人間はたいがいは捕食する側だからね。その視点が凄く面白かった。

そんな中、主人公は最後に共生を示す。彼女はゾンビ側の事情と人間の文明の豊かさ、そして感情の美しさを知っている唯一の存在として最後にキチンと筋を通す。まあ正直あんなのあの先生からしたら悪夢だろ!と思わなくもないけど面白いオチだなとは思った。まあ僕なら速攻で空気感染して自分もゾンビになるけど。

ディテールのムラとかちょっと弱いとことか展開の強引さとか言いたいことは少なくないけど、映画としてのビジョンがしっかりしているから終始物語に没入できた。
拾い物感。

★★★★★★★ / 7.0点

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