08
2017

映画レビュー:No.578 地獄の黙示録(「Apocalypse Now」)

地獄の黙示録
153分 / アメリカ
公開:1979年8月15日(日本公開:1980年2月23日)
監督:フランシス・フォード・コッポラ
出演:マーロン・ブランド
ロバート・デュバル
マーティン・シーン
フレデリック・フォレスト
サム・ボトムズ
ローレンス・フィッシュバーン
ハリソン・フォード
デニス・ホッパー







この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。




世界で僕よりフォックスキャッチャーという映画を大切にしている人はいないと思う、というくらいあの映画が好き。

▼戦争という不治の病
戦争という病についての映画だと感じた。戦場という非日常にとりつかれ、暴力を助長し、狂気を促し、勇敢さに酔う。その全ては劇中の言葉で言う地獄の恐怖に支配されることなんだと思った。
一度戦争に片足を突っ込んでしまえばこちらの意思とは関係なく飲み込まれるしかなくなってしまうんだろうな。
映画としては空という俯瞰から船という平面の視点になりプレイメイトのショーからボロボロの最前線基地という状況の変化を経て茂みからの急襲、そして包囲とゆっくり戦争が近づいてくるような構成になってる。
最前線基地という「ここから先はいよいよ失わずにはいられないぞ」という一線を越えたところで初めて部隊に死人が出るというのも感情の揺さぶり方として「ああ、もう本当に戻れないところに来てしまったんだ」という不可逆な状況への絶望が深まって良かった。

▼戦争映画を楽しむという不健康な快楽
戦争映画を観ている時に何かが起こるのを待ってしまう、もしくは起きた出来事を面白がるというのはこの映画の言葉を借りるなら非常に"不健康"な快楽の在り方なんだけど、観てる最中はその快楽に身を任せてしまう。
そうやって快楽と罪悪感(と言うほど大袈裟なもんでもないけど)、非日常と正気の間を行ったり来たりしながらよりエンターテイメントとしての暴力のインフレを望んでしまうのは戦争から帰ってきてもまた戦場に戻ってしまう兵士の心理の疑似体験のようでもある。
僕は多分ああいう状況にいたら間違いなく非日常に溺れて暴力的になってしまうタイプの人間だと思う。戦争映画を観る時に映画だからと割り切って楽しむだけでなくそういう危うさが潜んでいることを忘れないようにいたい。
まあもしこの映画で本当にそういう皮肉が意図されてるとしてもそれはきちんとエンタメができてこそなので作品自体の印象はやっぱり「面白い」って事で間違いないんだろうけどね。

▼戦争で狂う人々
サーフィンがやりたいからと早朝にベトコン村にナパーム弾を降らせる軍曹、慰問に来たプレイメイトのステージにリビドーの自制が効かなくなる軍人たち、同じボートの若い兵士は判断よりも先に引き金を引き最終拠点では指揮官が誰なのかも敵がそこにいるのかも判断できない兵士たちが辺り構わず銃弾をばらまいている。全員が全員思い思いに狂ってて、それは全て劇中の言葉で言う「地獄の恐怖」が反映された結果だ。
主人公は冒頭に任務を伝えられた時に「罪状は?」と聞き返すように最初から戦争の罪を見つめている。
だからこそ彼はカーツ大佐に興味を持つし、戦争という因果に支配される形で暴力を行使することはない。人を殺す時は明確に自分の意志で目的があって殺す。戦場の壊れた現実に最も冷静に相対してる。
でもやっぱりあそこにいたら「何が正しくて何が間違っているのか」なんて理屈は抱えてられないんだろうなと思う。その諦念というか無力感も彼の立ち位置に強く感じる。

▼ザ・雑感
爆撃の様子を広いカメラで捕らえてたり今の目で見てもびっくりするくらい高度な撮影が全編続くという驚異的な画面強度。「どうやって(この場合"どのくらい手間を掛けて"も含む)撮ったの?」って多分20回くらい言った。心で。
ローレンス・フィッシュバーンやハリソン・フォードがめちゃめちゃ若くて、しかも今の彼らの感じみたいなのが全然完成されてないのが面白かった。

なんせ153分もあるので起承転結の構成としてはトゥーマッチに感じる部分も多く途中で若干お腹いっぱいにもなってしまうなあという感想も強い。
美味そうなラーメン!美味そうなラーメン!お腹空いてる時なら美味そうなラーメン!とりあえずもうお腹いっぱいだけど美味そうなラーメン!と段々印象が後退していく感じ。
胃もたれするけど面白いというよりはどっちかというと面白いけど胃もたれしたなあという微妙に思いとどまらせる感じ。

昔の映画だとゴア表現とか音のリアリティを含めた驚かせ演出も幾分マイルドでその辺も僕にとっては素直に楽しむのに丁度いいくらいの演出レベルだった。なんてったって銃弾がはっきり目視できるからな。ありがたし。
あれ以上音がガンって来たり急にドカンと爆発したりするとPTSDになる。(不謹慎)

あと戦場においては優れた軍人なんてもんはいなくて全員が全員兵器の圧倒的な暴力を持て余している感じが滑稽だった。男らしさなんてとっくに意味を成さなくなってるのに銃を持てば自分が強い人間になった気になるってのは哀れだ。

★★★★★★ / 6.0点
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