05
2017

映画レビュー:No.586 リベリアの白い血(原題「Out of My Hand」)

リベリアの白い血
88分 / アメリカ、リベリア合作
日本公開:2017年8月5日
監督:福永壮志
出演:ビショップ・ブレイ
ゼノビア・テイラー
デューク・マーフィー・デニス
ロドニー・ロジャース・ベックレー
デビット・ロバーツ







この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。



僕は昔から友達を作ったりするのがあまり上手くなかったから多分人より友達は少ないし、それがたまに「なんであの頃はあんなに上手くできなかったんだろうな」って思うこともある。別の出会い方をすれば仲良くなれたのかなあと思う人が沢山いる。
だから、と言うと何か違う気もするけど、ここ最近チームメイトの結婚式が続いててそうやって結婚式に呼んでくれる友達とか本当にありがたいし大事に思う。チームメイトは毎週のように練習で顔を合わせるしそれが当たり前のように死ぬまで続くような気になっているけど、それが僕のとっていかに大事な存在なのか改めて思い知ってる。
昔からかわいがってるうちのチームのエースが招待状と一緒にくれた手紙で「けんすくんのいない結婚式はありえないと思ってる」って言ってくれて嬉しくて気持ちが抑えられなかった。今からこのザマで本番当日とかどうなってしまうんだ。笑
彼の結婚式ではウェルカムボードと紹介VTRを作ることになった。俺が友達で良かったと思わせてやるぜ。ふふふ。

▼アメリカ、リベリア合作で日本人の監督作品
アメリカ、リベリア合作で登場人物もゴリゴリのリベリア人で舞台もリベリアとニューヨークの作品なんだけど監督は日本人の福永壮志さん。経緯はわからないけど面白い出自の映画だなと思う。
入江監督が福永監督とトークショーをしていたり僕モテとの縁も深く、それゆえ観た人の感想も漏れ伝わってきたりして気になるリストの下の方からすくい上げるに至った。友人で札幌在住のゆみさんが福永監督が紹介されていた地元の新聞を切り抜いて取っておいた話が美しかった。うーん、僕もそういう文化的な発見をしてみたいもんだなあ。(文化的な生活をしていないので無理です)

▼「今ここ」を生きる人たちの話
主人公はリベリアでゴム農家として家族を養う労働者階級の男。
物語の内容、特に序盤は搾取や低所得で生活がいっぱいいっぱいという話なのだけれど、そこにいる人たちが深刻すぎない顔をしているのがとても人間臭くてよかった。ストライキだ!と息巻いたものの家では嫁に「何言ってんだ!働け!」と尻を叩かれバツが悪いから毎日働きに出るフリをしたり、「お前働きに行くってウソついてんのかよ!!」と爆笑する同僚が次の瞬間全く同じ理屈で奥さんから説教されて面目丸つぶれだったり、サボってもやることがなくてダベったりサッカーしたり釣りをしたりのんびり暇を持て余してたり、そうやってサボってるのが嫁さんグループに筒抜けだったり、ここから先は絶望ですよって分水嶺が生活水準の近くにある生活なのかもしれないけれど生きている人たちは絶妙にオフビートで観ていて心地よかった。
大変な時に大変だって顔をして生活してる人って案外いないもんだ。
でもみんな薄っすらとここではないどこかに憧れを抱いている。ラジオから流れる世界のニュースに耳を傾け想像する。アメリカに夢を抱く。自分の現実に不満を持ってて、それでもそこに生きるしかない。

▼イデオロギーのない主人公のトラウマ
結局ストライキは上層部の圧力に屈する形で挫折して、主人公はいとこを頼ってニューヨークに出稼ぎに行くことにする。
彼はいとこを通じてアメリカンドリームは幻想だっていうことを知っているし実際そうやって同僚にも説明している。それでも彼は国に家族を残してニューヨークに行く。
彼は実は自分の中に確かな芯を持たない人間だったりする。ストライキや渡米、後にわかる内戦での非道な活躍にも根本に彼個人のイデオロギーや目的意識のようなものは無い。
「変革は今だ!」という漠然と変化だけを煽る歌に合わせて身を揺らすように「何かが変わるかもしれない」という根拠のない期待だけを頼りに大きな流れに身を委ねている。きっと彼自身内戦の中で目的や思想ではなく同調だけで行動した事があるという経験を自覚しているから内戦での自分の影を、その罪を恐れている。
それを考えると彼がストライキについていとこに説明する時の「実際に何が起きているのかはわからないんだ。お前もその感覚はわかるだろう?」という言葉は重い。

▼主人公の人間臭さ
彼は情に厚く、誠実で、不器用な人間だ。
一度雇った人間はクビにできないし、助けてと転がり込んできた娼婦を家から追い出せない。同胞がはずんでくれたチップも「こんなに貰えない」と返してしまう。要領の良さなんてものはどっかに置いてきてしまったような男だ。
でも彼は自分の正しくない側面を嫌というほどわかってるからこそ自分なりの正しさの中で生きる選択をしたのかもしれない。矜持や誇りなんて表現は彼は嫌いそうだから言い換えるなら、それはとても"人間臭い"。
狡猾さも図太さもない。それゆえ失敗してしまう人生は沢山ある。でも、だからこそ絶望や理不尽にまみれたこの世界で人間臭さを持って生きていきたい。

僕はスクリーンを通じて自分の生きている世界の裏側や自分の人生からは見えない角度を観ることのできるこういう映画が好きだ。
僕の知らないところでも沢山の人が生きている。それが改めてとても美しいことだと思う。
ヤンキースやニックスの試合を観る時やサンダルを履きつぶして買い換える時なんかにふとこの映画の主人公シスコの事を思い出すかもしれない。元気でやっててほしいな。

★★★★★★★☆ / 7.5点

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