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2017

映画レビュー:No.596 アフターマス

アフターマス
94分 / アメリカ
日本公開:2017年9月16日
監督:エリオット・レスター
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー
スクート・マクネイリー
マギー・グレイス
グレン・モーシャワー
マーティン・ドノヴァン







この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。




うまい棒のシュガーラスク味がうまい棒史上屈指の美味さだった。納豆味以来の衝撃。

▼実話ベースとシュワルツェネッガーの水と油感
タイトルは直訳すると「余波」
「事実に基づく」っていう前提とシュワルツェネッガーの食い合わせの悪さったら無いよ。これ以上フィクショナルな存在も無いだろうって。
これまでキャリアを通じて数多の物事を腕っ節で解決してきたシュワちゃんがマギーに続いて腕っ節では解決できない不条理を前に苦悩する役をやっててここにきて急激な相対化の流れ。でもしっかりシャワーシーンもあって肉体的サービスも欠かさず。
一応肉体労働者という役柄とはいえ相変わらずお前みたいな父親がいるかってくらい必要最低限を大きく超越した塊のような肉体をしてる。
シュワちゃんの無骨で口下手な印象は航空会社の欺瞞たっぷりな舌先三寸野郎どもを前にするとより一層際立つんだけど今作では役としてもボキャブラリーが貧困な設定になってて不憫極まれりだった。

▼構成の工夫だけではカバーできない牽引力の弱さ
上空で旅客機同士が衝突して両機に乗っていた搭乗者が全員亡くなってしまったという航空史上未曾有の大事故「ユーバーリンゲン空中衝突事故」をベースに作られた話。事故の経緯はおろかこんな事故があったことすら知らなかったのだけど、その分良い意味で単体の映画として楽しむことが出来たかなとは思う。
被害者遺族のシュワちゃんと管制塔で最も直接的に事故と関わった管制官の男性、それぞれのパートを並列して描く構成。

94分と映画としては短い部類の作品だけれど、それでも少し展開がゆっくりに感じてしまった。
状況が確定して登場人物が出揃ったら観てる人にはある程度の物語の方向性やそれぞれの感情のベクトルが見えると思うんだけど(そこがわかりやすすぎるのがこの作品の一番の弱さかなと思う)そこから中々話が前に進まない。
基本的には「こうした方がいいんじゃない?」って提案されたらその通りに物事が進んでいるし、その方向も一定で予想の裏切りが少ない。
少し意地悪な要求になるけれど二次的被害や不条理の強調など登場人物をもっと色んなやり方で追い詰めないといけないと思う。特にシュワちゃんに関しては彼のデフォルメされたパブリックイメージもあって少し単純な描写に見えてしまった。
構成で興味を作る工夫はしてあって、特に一年時制が飛ぶところなんかは「おっ!」と思うのだけど、展開としては飛躍が無いので興味をひきつけてもその勢いが長続きしない。

▼シーン自体を面白くする工夫の欠如~描かれるやり取りの単調さ
リアリティのあるドラマの構造としてツイストを軸に脚本それ自体の流れで物語的な裏切りから興味を作るやり方と、一つ一つのシーンを積み重ねてテーマ性や世界観の濃度を高めるやり方、この二種類の出し入れで物語は引っ張られると思うんだけど、本作の場合前者は割り切っていて後者は特筆すべき描写が少ない。結果それが作品全体で弱い印象しか残さない要因になっているかなと思う。
例えば「一生懸命元の生活に戻ろうとしてるんだ...」とか「表面上はこう振る舞っているけどギリギリなんだ...」とか観客が無理しなくていいよって思うくらい不憫さを強調して描いたり、逆に善意による追い込みとか見えない敵意に怯えたりとか、もしくは単にデリカシーの無い人間に振り回されたりとか、会社側の露骨な責任転嫁で加害者にさせられることの被害者性、そのやるせなさ、感情移入の方向をもっとエグいくらい押し出して良いと思う。
現状は彼らに接する人物のキャラ立ちや展開の露悪度が足りなくて映画として単純にパンチ力不足に感じるし、基本的には会話と心情が一致していて面白みに欠ける。
実話ベースで過剰な演出を控えたのかもしれないけれど現状充分作り話の手触りは残っているし、そこに遠慮するくらいなら最初から手を付けない方が良い。
社会的に改めて映像化する意義というのは映画全体の印象として観終わった時に観客が感じられる作りにすればいいわけで、作品内部ではきちんと個別の面白さも担保しないといけないと思うよ。そこがちょっと弱い。

★★★★★ / 5.0点


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