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2017

映画レビュー:No.597 オンザミルキーロード

オンザミルキーロード
125分 / セルビア、イギリス、アメリカ合作
日本公開:2017年9月16日
監督:エミール・クストリッツァ
出演:エミール・クストリッツァ
モニカ・ベルッチ
プレグラグ・ミキ・マノジョロビッチ
スロボダ・ミチャロビッチ







この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。




高校時代「最強モンスター」という遊戯王カードやってる小学生のボキャブラリで絞り出したような二つ名を付けられてもめげずに頑張っていた菊池雄星がついに日本球界No.1のピッチャーにまで成長してくれて僕はとても嬉しい。
史上最速の速球派左腕という響きのロマンだけでご飯三杯はいける。

▼作り話=寓話性の高いコミカルさ~映画の楽しい手触り
最前線のど真ん中に農家で採れたミルクを届ける牛乳配達人が主人公。隼を従えロバにまたがり傘をさして銃弾飛び交う戦場でひょうひょうと牛乳を運ぶ。
さらっと説明される過去からも彼は戦争によって壊れてしまった男ということがわかるけれど、描き方としては彼に限らずこの映画の登場人物は大なり小なり壊れていて、相対的に悲壮感や残酷さが低い不思議なリアリティライン。
物語の背後には戦争の悲惨な暴力や不条理があるけれど基本的にはそれを感じさせない楽しい作品だった。
音楽はどんちゃんどんちゃん鳴っているし人物はキビキビとコミカルに動き回る作り物感の強いタッチで動物まで演技をしているように見えるんだけど、冷静に観たらどうやって撮ってんだってくらい超たくさんの動物がかなりガッツリシーンの沿った動きをしていて感心を通り越して感動してしまう。クマとか逆に偽物なんじゃないかと疑ってしまうレベルで監督本人演じる主人公ががっつり絡む。

▼リアリティではなく物語内リアルの人~「何を描くか」ではなく「どう描くか」の手つき
物語としては「無骨な男が好きになってはいけない女性と恋に落ちて三角関係がこじれる」っていう小学3年生が考えたような始まり方をするんだけど、観る側としても「何を描くか」ではなく「どう描くか」に的を絞って映画の狂気じみた躁なテンションを楽しめる。
映画を観始めて一分もすればリアリティではなく物語内リアルの人なんだろうっていう事はわかるし、映画全体としても「これぞ破綻!」と言わんばかりに勢い良くデッコンボッコンしている。
僕は元々典型的な「脚本で映画を観るタイプ」の人間だったからこの手の映画に対して画面に対する興味を保つのがすごく苦手だったんだけど今回はガシャンとリテラシーのモードを切り替えて映画のノリに正しくチューニングできた。成長した感!

監督は主演も兼任という立場を活かしてモテモテの役を演じるという男として潔い権力の使い方をしてる。
ヒロインはモニカ・ベルッチが演じてるのだけど僕が元々彼女の印象として持ってたエレガントさは一欠片もまとわず服も体もモリモリ汚して色んな事をやらされてる。

▼物語の破綻した手触り
序盤は背景にある暴力の空気に対してシーンとしての楽しいサービスが過剰に前に来る、まあ若干の頭のおかしさを含む楽しい場面が並ぶ。時計をめぐるよくわからない見せ場に始まり、耳の縫合、雨漏り、宴会、修羅場、焼き討ちの思いやりの無い焼死体まで変なバランスのおかしさが絶え間なく続く。
対して後半はしつこいくらいの逃走劇。こっちもバランス度外視の足し算指向で次何が起こるのかもわからなければ落とし所も見えない。特に地雷原が出てきて以降はどんな気持ちで観ていいのかわかんなくなっちゃって口角の力が抜けてしまった。
ここまで来ると好みの問題もあって明確にもたれているのが自分でもはっきり自覚できる状態だったのだけど映画自体はお構いなしな勢い。

映画の中で散々面白く人が死んでいく果てに意外なくらい誠実な祈りで収束するラストはちょっとズルいけど(笑)、監督の今作のスタンスなんだろうと思う。
人にこの映画について説明するとなると「破綻してるし長くてもたれる」と言わざるを得ないんだけど、それはこの映画の良さを減じる表現ではない。

★★★★★★☆ / 6.5点


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