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2017

映画レビュー:No.598 50年後のボクたちは(原題「Tschick」)

50年後のボクたちは
93分 / ドイツ
日本公開:2017年9月16日
監督:ファティ・アキン
出演:トリスタン・ゲーベル
アナンド・バトビレク・チョローンバータル
メルセデス・ミュラー
アニャ・シュナイダー
ウーベ・ボーム







この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。




2011年の浅尾の成績:79試合87.1回防御率0.41 7勝2敗10セーブ45ホールド(中日75勝)
そりゃどっかおかしくもなるわな。復活してくれ。

▼ジュブナイル物のロードムービーに感じること
原題も邦題も映画の内容が全くピンとこない。監督はファティ・アキン。トルコの人かと思っていたら(何ならトルコ映画なのかと思ってた)トルコ系ドイツ人で映画自体もバリバリのドイツ語映画だった。
考えてみたらたしかにサッカーのドイツ代表とかトルコ系の名前多いもんね。エムレ・カンとか、メスト・エジルとか。まあこの二人しかパッと出ないけど。(調べたらこの二人以外ほとんど知らなかった)

ジュブナイル物って夏休みみたいな長いバケーションであらゆる制約から解放されてモラトリアムを謳歌する話が多いから(どの国にも義務教育の学校社会でコンプレックスを募らせて子ってのはいるもんで)夏の終わり頃に観るのが季節感的にもモラトリアムな気持ちを喚起する意味でも丁度いいなと思う。
「映画だから何やってもいい」っていうのと「子供だから何やってもいい」っていう許容される自由度の高さがジュブナイル物のロードムービーの良さの一部かなと思う。その意味でコメディとは相性が良いけどその分好きにやって良いんだからちゃんと面白くしないとダメだぞ!って場面一つ一つに要求される責任も大きい、結構ハードルの高いジャンルでもあると思う。

▼イケてない系主人公のマイク君
主人公はクラス全員が呼ばれる誕生日パーティに呼ばれないようなイケてない男の子マイク君。
そんな彼のナード性を表す描写の一つに彼が呼ばれもしない誕生日パーティに呼ばれる気満々で主催の高嶺の華の女の子の似顔絵をせっせと描くって場面があって、冒頭から中々の芸術学部殺しシークエンスに鼻腔が酸っぱくなる。プロでもない限り好きな娘の誕生日プレゼントに手作りの何かしらってのは絶対にやっちゃダメだからな少年。上手い下手以前の段階でアウトだぞ。
そんなことだから終業式で案の定ガツーンと現実を突きつけられてしまう。家に帰ってベッドを縦にしたり横にしたりというよくわからないやり方で「何で俺はリア充なれへんのや!」という行き場のないルサンチマンを爆発させた後、シクシクと号泣するマイク君。そんなことで泣くなよ。笑

▼バディ結成の展開の気持ちよさ
そんな彼が転校生でアウトローのチックとひょんな事から同調する。主人公は現状ぼっちの中のぼっちなので割とどの角度から攻めても「お前、俺をわかってくれるのか…!」ってな具合に友だちになってしまいそうなんだけどチックのナイスキャラも相まってここから二人が盗んだ車で走り出すまでがすっごく良い感じ。
「リア充爆発しろ!」ってマイク君の鬱屈をチックが汲んで「じゃあギャフンと言わせに行こう」と動き出すんだけど、ジュブナイル物は一面として"一人前に憧れる"ってのを原動力にするジャンルなので、誕生日パーティの会場に乗り込んで「お前らは俺のことを"大人"って理由で怖がってるみたいだけども」って全部わかった上でクールにかまして本当にマイク君に「なんか上手いこと行った」っていう優越感を味あわせてしまうチックのマジックにはそりゃあ惹かれるよなと思う。
「俺の知らない世界を見せてくれるこいつと一緒にいて楽しい!」っていう感情を追い求めて旅に出る。

▼本作の楽しさについての個人的な雑感
設定上「好き勝手やっていい」って免罪符が強いとはいえ僕個人の好みとしては映画を観ててモラル的是非とかが結構気になってしまうタイプではあるのだけど、本作の場合「好き勝手」が他人に迷惑をかける形を取らないので素直に楽しめた。
トウモロコシ畑のシーンはあるけど映画におけるトウモロコシ畑は車で荒らされる為にあるのであれは良いのだ。(乱暴)
どうしても行き当たりばったりな展開は出てくるのだけどそれについても最近は「現実の偶然もこんなもんかもな」ってあまり理詰めで考えすぎないように映画が観れるようになった。(えっ、これって普通?笑)

▼成長と特別な時間の終わり~青春の余韻
主人公二人が「やっぱりお前は最高だ」って再確認するようなやり取りは本当に楽しいし、翻ってそれが自己承認のコンプレックスを埋めてくれる感覚がこの映画の余韻のとても良い部分だと思う。
二人が目指したワラキアっていうのはルーマニアに実在する地名であると同時に劇中で語られるようにドイツ語では「未開の地」の代名詞らしい。だからこそ最後にマイク君がかつて好きだった女の子の「夏休みはどこ行ってたの?」という質問に「ワラキア」って答えるのがとても感動的。(実際彼らは本物のワラキアには行けてないからね)
エンドロールのアニメーションも痛快で最高。期待をパンパンに膨らませて行くようなタイプの映画ではない気がするけどたまにこういうのがあると嬉しいってタイプの愛らしい小品。
ファティ・アキン監督は今年のカンヌで評判を呼んだ「In The Fade」の公開を楽しみに待つことにします。

★★★★★★★★ / 8.0点

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