02
2017

映画レビュー:No.601 スイスアーミーマン

スイスアーミーマン
97分 / アメリカ
公開:2016年6月24日(日本公開:2017年9月22日)
監督:ダニエルズ(ダニエル・シャイナート、ダニエル・クワン)
出演:ポール・ダノ
ダニエル・ラドクリフ



この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。








600本記事書いたらしい。継続するとそれなりに得るものがある。これからもよろしくお願いします。

▼一人ぼっちの漂流者と水死体のサバイバル
相変わらず座り心地の悪いTOHO日比谷シャンテ4階のスクリーン。
スイスアーミーナイフ=十徳ナイフならぬスイスアーミーマン=十得人間。遭難者ポール・ダノが万能水死体ダニエル・ラドクリフを使って人間社会に帰ろうとする話。寓話というか主人公にとっての"物語"というメタファンタジーの構造。
、、、二行で身も蓋もないネタバレをしてしまった。記事600本書いてもあらすじの要約は一ミクロンも上手くならない。

おならを推進力に孤島を脱出したり、口から結構な量の水をガブガブ吹き出したり設定的にもビジュアル的にもだいぶキている役をダニエル・ラドクリフが渾身の肉体的演技で好演。全身脱力の人ひとり背負って森の中歩き回るポール・ダノも、それと一緒に受け身無しでゴロンゴロン滑落するダニエル・ラドクリフも見上げた献身性で頑張っている。
主人公が自殺を図る場面から話が始まる。アバンタイトルを終え、流れ着いた先でサバイバルが始まるのだけど漂着物や山の中のゴミが「そんなものが無人島にあるわけないだろ」って物ばかりで、このあたりの違和はおいおい明らかになる。

▼感情的な落とし所と即物的な面白さの振れ幅
一緒に行動する死体が次第に動いて喋って役に立つってそりゃあ寓意を読み取りながら観る作品だとは思うけど、その先にあるセンチメンタリズム、叙情、エモーションを軽くぶっとばしてしまうくらい画面で起きる出来事がどうかしてる。
主人公がどういう人間でこの旅が彼にとってどういうものだったのか、身も蓋もない現実が客観的視点に痛々しくさらされる最後に物語の切実さやその先にある主観的救いが一種の物語論としてぐっと味わいを増すのだけど、とはいえどうかしているものは寓意があろうがなかろうがどうかしてる。

▼"物語論"としての理想と現実の描き方
現実では"つまらない人間"というコンプレックスを抱える主人公が妄想の中でこれ以上無いほどネジのぶっ飛んだイマジネーションを爆発させているのは、映画全体の根は真面目だけど物語の推進力は超くだらないアイデアの連打っていう構造と似ている。
「どうして俺はこんなにつまらない人間なんだ!」って悩んでばかりで現実にコミットできないというのは言ってしまえば誇大妄想がリアルに全く追いつかないということかもしれないし、「俺のイメトレではもっと上手くいってるんだけどなあ」っていうのが脳内でとっても美しい映像やドラマチックな展開で再現されるというのは僕もわかってしまうところがある。

ラストで主人公は現実に帰る。ウィアードな自分を認めて。
コンプレックスなんて死には値しないぜ、という救いに解決はないけれど、それは明日からまた頑張ろう。

★★★★★★★☆ / 7.5点

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