08
2017

映画レビュー:No.603 望郷

望郷
112分 / 日本
公開:2017年9月16日
監督:菊地健雄
出演:貫地谷しほり
大東駿介
木村多江
緒形直人
森岡龍








この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。





手に負えないほど屁が臭い。

▼親の心子知らずでした、という話
演出が丁寧で特に演技の面でとっても見ごたえのある作品なんだけどちょっと脚本的な弱さを感じさせる物語でもあった。
起きる出来事自体の面白さではなくより登場人物の内側に向かっていく物語なのだけど、登場人物たちそれぞれに事情がありますよって事がわかりやすいので画面の中の対立項の落とし所にあまり意外性を感じられなかった。
三幕構成の一幕目が貫地谷しほり側の母と娘の話を描く「夢の国」、二幕目が大東駿介側の父と息子の話を描く「光の航路」で、どちらもすーごくざっくり言うと「この歳になってやっと親の事がわかった」って話。
二人共奇しくも自分の心のつかえになってた親と似たような境遇に陥って、改めて"過去"の全く違う側面に気づくことが出来る。そして赦し、赦される。

▼演出的な盛り上げの弱さ~素直過ぎる物の見せ方
一応問題を解決しようとする話だから時制のコントロールも含めて興味を生み出す作りにはなってるんだけど物語が段々そういうミステリーの要素を放棄していくのがもったいない。
一幕目の「夢の国」はミステリーとして一番美味しいカットを出来事が起こった時点で見せてしまっている。"視点の転換"が物語の内容とも一致するのだからそこでもっと盛り上げていいと思った。
二幕目に関してはいかにも正しい理由がありますって感じで、総じてあまり盛り上げることには興味のない監督なのかなと感じた。

貫地谷しほりパートのお屋敷という設定や大東駿介パートの政治家の娘という設定など今時こんなやついないだろうっていう(もしくはどこかにはいるのかもしれないけどこんなわかりやすい形で描くかっていう)ティピカルな障害を用意しながらそういう設定のステレオタイプな部分だけを物語に使ってリアリティや実在感を描く気が全くないのは少し姿勢として安易に見えた。

▼丁寧な撮影~空気の作り方
時々ハッとするような人物のアップとか単純に地形を活かした撮影がうまかったり単調にならない画作りの丁寧さを感じた。撮影監督はデストラクションベイビーズなども撮ってる人らしい。屋敷の前の折り返してくる車の使い方とかすっごい映画的で上手いなと思った。
この映画は全体として「反復」がキーになっているけれど撮影による見せ方はどれもとても気持ち良い。

非常に静かな作品で好みからすると少し起伏が弱いかなとも思うのだけど、あくまで感想は好みの範囲を出ない。
この作品に限らず最近はめっきり「つまらない」とか「ヒドい」と感じることが少なくなった。それは自分にとってとても良い変化だと思う。

★★★★★ / 5.0点

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