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映画レビュー:No.639 ロープ

ロープ
80分 / アメリカ
公開:1948年8月28日(日本公開:1962年10月20日)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジェームズ・スチュワート
ジョン・ドール
ファーリー・グレンジャー





この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。





慢性的な疲れ目で白目がいつも汚い。

▼タイトな話を見せ切るための雄弁な映画的語り口
上映時間80分とタイトなワンシチュエーションサスペンス。犯罪者の虚栄心を燃料にスリルに火をつけ、エンターテイメントが閾値を越えたところで身も蓋もない責任を問う。楽しませつつハッとさせる奥行きのある構造。シンプルだけど抜群に面白い。

何をどう撮ったらどういう映画的な効果があるのかって映画技術の見本市かというくらい、とにかく画面に無駄がない。
漫然と映すだけなんてやる気のないことは絶対にしないから!という熱意を撮影の仕事ぶりからビシビシ感じる。見終わった後から感じる無駄の無さからすればほぼほぼ作為だろうというくらいの統制具合なんだけど、決して映画として「ああ、今目配せされてるなあ」という思わせぶりは感じない。画面が訴えてくる情報と状況の密度だけでグイグイ目が開いてく。
見逃すなよ、という説得力が凄い。

▼面白さのために技術があるというサービス精神
複数人の人物たちが自然に会話しながら行ったり来たりするという複雑な立ち回り、情報の提出と状況の変化のリアリティに対する過不足無さ、セリフにカメラワーク。
物語の印象自体は軽やかなんだけど、パッとカメラの向いた先で映るものが決定的に鋭い。観客の特権的な好奇心をもりもり刺激する作り。
長回し一つにしてもリアルタイム進行感や観客もその場に居合わせる感覚を高めていて技術的達成度と語り口の必然性が常に密接だし、それが面白さのために使われていることがとてもいいなと思う。技術をふりかざす頭でっかちな理論派ではなく画面内はあくまでエンターテインしてる。

▼割り切って見るべき緩めのサスペンス
話としてはゆるめのサスペンスと言うか時代の要請からすればこのくらいが妥当なんだろうというリアリティで、適度にコミカルでユーモラスだしタイトロープも物語内の理屈という幾分マッチポンプな構成ではある。
犯人の片割れが「やべえ...」ってもろに顔に出したり「バレてんのか?バレてないのか?」というハラハラもサービス増し増しで楽しいところ。
そもそも無理があるだろって点を話が内包してるので、上手くいくのか?という展開自体の裏切りには期待させずどこでどうばれるのかというサスペンスそのものを楽しみやすい作りになってる。
その上で結末では結構バッサリと暴力をエンターテイメントとして扱うことの責任を問う。意外と重い問題提起にぎょっとする。考えてみるとこういう相対化の仕掛けも映画的な構造と言えるかもしれないし、とことん映画であることに意識の高い作品という印象だった。

▼愚か者の犯人たちを映すコミカルな視点
物語を通じて犯人たちは一貫して愚か者として描かれていて、序盤からの「いつまで続くんだろう」という長回しのワンカットが途切れるところの「はい!バレました!」という切り返し一つ取っても行く末はお察し。スッカスカのジェンガからなけなしのブロックを引っこ抜いていくような話。
会話しながら弾いてるピアノのメロディが暴れだしたり、緊張に耐えられずドッカンドッカン自爆や誤爆を繰り返したり、翻ってなんでこいつを巻き込んだんだというレベルでそもそもから色々とダメなコンビ。
何ならしょっぱなに家政婦が第一声で「何でテーブル変えたの?」という辺りから物語的信用が無くて笑える。

タイトで上手くて面白い。ここに来て恥も外聞もなくヒッチコックすげえなとか言い出す俺よ。「知っとるわ!」ってな。ははは。

★★★★★★★ / 7.0点



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