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映画レビュー:No.646 タナーホール

タナーホール
96分 / アメリカ
公開:日本劇場未公開(特集上映にて観賞)
監督:フランチェスカ・グレゴリーニ、タチアナ・ボン・ファーステンバーグ
出演:ルーニー・マーラ
ブリー・ラーソン
ジョージア・キング







この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。




KOK2017はCIMA、黄猿と応援していたMCが次々と敗退してしまったけれどとても楽しい大会だった。
ベストバウトはNAIKA MC vs GADORO。スポーツ感覚のMCバトルが多くなったけど自分自身を賭している人たちがやるかやられるかの言葉のやり取りをするKOKの緊張感はたまらないものがあった。
GADORO二連覇おめでとう。強かった。

▼概要
2009年の作品で主演にルーニー・マーラ、共演にブリー・ラーソンと8年後にしっかり訴求するネームバリュー。
調べたら僕がその姿を確認したルーニー・マーラの中では最古の姿らしい。ブリー・ラーソンは21ジャンプストリートの方が古かったけど。ブリー・ラーソンは昔はブリブリのギャルイメージだったんだねえ。若い。
タイトルのタナーホールは学校名で、女子校の女子寮が舞台の話。多感な時期の女子校の女の子なんて僕にとってはポアンカレ予想と同じくらい何もかも理解の外側にあるけど、別に「女子高生の気持ち、わかる!」というレベルの感情移入とまで行かなくともそれなりに楽しいウーマンスを見せてくれれば余は満足です。

▼学校という世界でコンプレックスを抱える少女たちの物語
主人公の仲良しグループに転入してきた幼馴染が加わって一悶着ってのが基本プロット。主人公は幼少時にこの幼馴染の「なんでそんなことするん!?」って所業を目撃して以来苦手意識が有る。片や優等生、片や不良(しかも要領良さげ)。僕も遠足のおやつ代はきちんと守るタイプなので、「ルールなんて破るために有るんだしバレなきゃ平気っしょ」って考え方を周りに許容させようとしてくる幼馴染にルーニー・マーラが覚える嫌悪感はすっごくよくわかる。

転入生の登場でグループ内の立場やパワーバランスが変わってしまって主人公が孤立したり苦労したりする話になるのかなと思いきや、グループ内の、まあ正直一番可愛くない女の子が意外とキャラとして大きい役割を持ってて、主人公と幼馴染の直接的な主導権争いのようなわかりやすい図式にしない物語展開がとても丁寧。
彼女たちのそれぞれ持ってるコンプレックスはとても思春期特有の性格のものでどれも単純じゃない。学校という小さな"世界"でどうしても生じてしまう劣等感をとても上手く捉えている。

▼少女たちそれぞれのアイデンティティとコンプレックスの目覚め
特に高校生というのは「私を見て!」って自意識が強烈に芽生える時期で、他人にとっての自分という形で何者かになりたがる。
その中でも女性の場合セックスを意識するのが大きいんだろうな。生物学的には男性は種をばら撒けるけど女性は一人を選ばないといけないわけで、その性差の釣り合わなさと向き合いながら男性との理想の関係を考えている。"リアル"というものの美しくない側面に気づきつつある季節。

一方では友情と恋愛の違いに苦しむ子もいる。友情と違って恋愛は平等じゃないからフッたりフラレたりが生まれるし、思い通りにならない。「この人を好きになれたら楽なのに」って場面は双方不幸でとても痛ましい。
あの二人がお互いの間にどうしても生まれてしまう男と女って関係に決着をつける(正確にはつけようとする)最後の展開はとてもピュアでおじさん応援したくなった。

▼"悪役"に向けられる優しい視線~思春期の肯定
幼馴染の女の子はというとアル中の母親に人格を散々否定されて生きてきたようで、彼女の破壊的な正確こそ自己承認欲求の切実な表れだったりする。
彼女は基本的には嫌なやつで単に悪意で「なんでそんなことするん!?」て事をやったりする困った子なんだけど、それが全然彼女のなってほしい結果には繋がらないしそういう中に彼女の抱える孤独が染み出してくる。
誰だって世界の理不尽に対して後ろめたい衝動や悪意を抱いてしまうことはある。彼女が何に向き合ってきて、なぜこうなったのか、それが少しづつ見えてくる構成がとても上手いし優しい。
とはいえ物語は彼女の危うさで引っ張られている部分が大きいというか、彼女が嫌がらせや悪友っぷりが報われるような展開にはもちろんならないんで、ジリジリと爆発の予感が積み重なっていく。要は彼女は自分以外の人が幸せなのが憎くてしょうがない人なんだよね。そういうベクトルが強まっていく。
彼女はクライマックスでついに「お前それやったら人として最低だぞ」という決定的な行為に及びかけるのだけど、彼女たちの抱えるままならなさが瀬戸際で彼女たちを結びつける。
全員で不幸になる可能性もあったけれど、良心が救いになる。

特に若い頃は無邪気に相手を傷つけてしまうことはある。
例えばただの喧嘩の中で自分の吐いた言葉が思いの外相手に深く刺さってしまったり。例えば冗談のつもりが相手を怒らせてしまったり。
相手の立場や気持ちに想像力を持つこと、初めての経験をすること、報われることや報われないことを知ること、そういうあれやこれやで人は成長する。
「私を見て!」じゃなく「相手を見る」。それを理屈じゃなく経験から学ぶ。そういう瞬間に一つ階段を昇るんだろう。僕にも心当たりがある。

とっても良い映画だった。冒頭のコミカルなシークエンスもきちんと作品のリアリティに回収される。主要の4人は全員成長している。
大人な目線で若者に寄り添った作品。教師を目指す人なんかは観るといいかもしれない。

★★★★★★★★ / 8.0点

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