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映画レビュー:No.651 さんかく 再鑑賞

さんかく
99分 / 日本
公開:2010年6月26日
監督:吉田恵輔
出演:高岡蒼甫
田畑智子
小野恵令奈





以前の感想はコチラ



この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。





つめかえ用のシャンプーと間違えてコンディショナーを2パックも買ってしまったので最近は髪の毛がトゥルトゥルです。

▼映画監督としての画面を作るセンスの良さ
さんかくにもある「お前が思っているような物語ではないんだよ」という構成は吉田恵輔監督のお家芸だけれど、改めて観返すとそういう大きな仕掛けもさることながら一つ一つの場面の見せ方までとても"上手な"監督だと強く感じた。
映画的なストーリーテリングの引き出しがとても豊富で場面の意図を画面に込める文法の多彩さにうんうん唸ってしまう。同じ素材を揃えても他の人ではこんなに面白く見せられないと思うし、それこそがまさに映画監督の仕事だなあといちいち膝を打っちゃうわけです。爪の垢煎じてお茶でも作って映画業界にばら撒いて欲しい。

▼意地悪な客観性
例えば親友からのマルチの誘いを信じかけてる彼女に「お前ホントにバカだな」と言い放つ主人公がおよそバカしか乗らないようなデコ車に乗っている、という「このように人は自分の事になると客観的に見ることができないんです」って愚かな矛盾を一つの場面の中で鮮やかに浮かび上がらせたり。主人公の幼女へのテンションをカメラや音楽のテンションでいかにも舞い上がってますよーと表したり。かと思えばパッと引きの絵を挟んで観客を冷静にさせたり。
常に意図を感じる方法論を取っていて画面の質がとても高い。表面的な出来事から一歩引いた目線で楽しむ事ができるのが吉田恵輔監督作品の醍醐味だと思う。

▼キャラクターの印象の変化
吉田監督はキャラクター描写をデフォルメされた一種の類型からスタートさせることが多いけど、そこから最終的な人物の印象に至る変化が面白さの肝であり、テーマと不可分でもある。
好みとしてはそこまでわかりやすくしなくても、という部分も無くはないのだけど、そういうのは大概序盤で一笑い取るための掴みになっていたり、もしくはそういう面こそ後の皮肉な展開に効いてきたり、基本的には物語内で責任を取る演出がされていると思う。
つまり「わかりやすいキャラクター」という印象もまた「あなたが思っているようなものではない」というストーリーの一部になっている。

▼ストーリーテリングの親切なエクスキューズ
前半は主人公の勘違いを助長する少女の小悪魔性がこれでもかと描かれるけれど、一方で少女側に「実際はちょっとした憂さ晴らしみたいなもんなんです」という本当にしょうもない動機めいたものをほんのちょびっと挟み込むことで、事態の子供じみた一面を観客だけはわかって見れる親切な設計でもある。
滑稽に思っていないのは登場人物本人だけという意地悪なコメディの構造が徹底されている。吉田監督は本当に性格が悪い。
逆に言えば観客には「主人公と同じように勘違いしないようにね!」という監督からのエクスキューズがあって、それを見過ごして勘違いしてしまうと結構痛い目を見る。

▼吉田監督作品の幕引きの切れ味
何もわかっていない田畑智子、状況をコントロールしているようでやっぱり何もわかっていない高岡奏輔、全てをわかっている小野恵令奈と実は全然三角関係の話ではない。
吉田監督は映画の余韻の残し方も毎回素晴らしいけど本作も初めて「さんかく」が見える一番良いところでズバッと終わらせる。ラストシーンは撮影するまでどうするか決めずにいたらしくそれがオープンで不思議な余韻になっている。
解釈が開かれているというのは観客の心に登場人物が住み着いていることと同義で、肝心なところは観客に放り投げるのも吉田監督の意地の悪さが見えてニヤニヤしてしまう。

忘れてた部分で言うと中盤マルチの勧誘が家まで来るところで上司っぽい男が言う「他のマルチだったりするやつはよく"儲かる"みたいなこと言うじゃないですか。安心してください。うちは儲かりませんから(キリッ」と「じゃあもう一個もメリットねえな!」というよくわからない理屈がツボだった。
吉田監督はどの作品にもデリカシーのない宛書きの手触りがあるけれど上映後トークショーの監督が「この人はそういう事するわ...笑」という人柄で、どうかと思った。(褒めてる)

★★★★★★★★ / 8.0点
ちょっとだけ上方修正しようっと。改めてめちゃめちゃ面白かったです。




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