FC2ブログ

映画レビュー:No.652 ばしゃ馬さんとビッグマウス 再鑑賞

ばしゃ馬さんとビッグマウス
119分/日本
公開:2013年11月2日
監督:吉田恵輔
出演:麻生久美子
安田章大
山田真歩
岡田義徳


前回鑑賞時の感想はコチラ





この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。




自宅で観る映画は全部旧作扱いだろうよそれは。

▼本作に対する吉田監督の目線
さんかくが恋愛における支配関係を階層に分けて描いていたのと同様に、こちらも夢と諦めの段階をキャラクターごとに分けて託している。自分は特別な人間だと根拠のない自信をまだ信じていられる天童、才能がないと自覚していながら夢を諦めきれない馬渕、未練との折り合いをつけようとしながら別の道を行く松尾。
映画なので滑稽さを客観的に映してコメディにするという性格の悪さももちろん長所になるのだけど、吉田監督はいつもそういう突き放した描写の先に「失敗もまた人生の一部」という肯定があるから好きだ。
本作は吉田監督作品の中でも特に優しい。それは失敗してしまう事の肯定ではなく失敗そのものの肯定という話だからだと思う。

▼厳しくも優しい登場人物の扱い
冒頭とラスト付近のメタな仕掛けも自分の思い描いていた物語とは違う物語を選び取った馬渕に向けて「それでもあなたはあなたの人生の主人公ですよ」と背中を押してあげているようでグッと来た。
改めて見ると馬渕は天童にも負けず劣らずのビッグマウスで無自覚な分なんならより悪質にも映るんだけど、さすが吉田監督だけあって彼女のそういう面こそが彼女を痛めつけるという底意地の悪い展開をことごとく用意しているので観ているうちに「もうそろそろ勘弁してあげても...」といつの間にかこっちが同情してしまう作りになってる。

▼相変わらず意地悪な吉田監督節
本作はいたたまれなさにダメを押すようなコメディの構造が随所に見られてそういうところはいかにも吉田監督らしい切れ味。
脚本をやんわりと全否定されたあと出世した同級生に忘れられてるくだりをたたみかけたり、入念に化粧して臨んだ結婚式の余興で「主人公はここですよ!」と観客に気づかせるための意地悪な演出だったり。そこからさらに自尊心傷つける嘘をつかせたり。
よっぽどの鬼畜でなければ「もうやめて!とっくに馬渕さんのライフはゼロよ!」と彼女に優しくなるでしょこんなの。

▼技術的引き出しの多さについて
映画文法の多彩さについて監督に質問したら「PVの現場で照明技師として仕事する中で培った」との事。なんと約300本も関わっているらしい。
PVの映像演出はまさに視聴者心理を煽ることに特化しているわけで特定の人物の影響ではない事も含めてなるほどという感じ。
何よりそういう引き出しから毎回正しい方法を取捨選択できるところが吉田監督の凄いところ。

次回作の犬猿も俄然楽しみになった。







関連記事
スポンサーサイト

Comments 0

Leave a reply