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映画レビュー:No.650 南瓜とマヨネーズ おかわり(2回目)

南瓜とマヨネーズ
93分 / 日本
公開:2017年11月11日
監督:冨永昌敬
出演:太賀
臼田あさ美
オダギリジョー
清水くるみ
浅香航大
若葉竜也
光石研






初見時の感想はコチラ


この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。




うちの食卓ではよく出たので南瓜とヨーグルトとレーズンというのは一般常識的な組み合わせだと思っていたのだけど大学時代に友人から次々と「そんなの美味いわけない」と言われて最終的にケンカになった。

▼二度目の観賞で思ったこと
二度目の南瓜とマヨネーズは何が起こるかわかっている分「ああ、この人はこの時こう感じたんだ」という感情の機微が痛いほど見えて初見時よりさらに胸が苦しかった。
この手の物語にしては珍しく何をすればこういう結末にならなかったのかというのが明確に描かれていて、だからこそラストシーンは「遅すぎた」という切なさと「完璧な答え」という感動が胸の奥で綯い交ぜになって僕もあの場面のツチダと同じように泣き笑いしてしまうんだなと思う。

▼セイイチの感情のプロセス
このままじゃダメだってわかっているけど見て見ぬふりをしてきた感情が丁寧に積み重なっていく。特にセイイチの「俺はお前に好きと言ってもらえる男じゃなくなった」という気持ちに至るプロセスは数年前の自分そのものだった。
監督は二人を「時間にボロ負けした」と表現していたけど、まさに自分の可能性に対する期待がしぼみきってあとは後ろめたさが借金のように膨らんでいく、そういう季節の物語だった。
だから最後にセイイチがきちんと答えを出したことにも感動してしまったんだろうな。負けたまま終わってしまう関係も沢山ある。

▼セイイチとハギオという対照的な二人の男
太賀演じるセイイチは優しい男で、ツチダを傷つけないように結論を先延ばしにしている。序盤のツチダの行き過ぎた自己犠牲も根本的な原因は自分にあると彼自身痛いほどわかっているから怒るに怒れない。
対するオダギリジョーのハギオは気さくだし、気楽だし、きっとSEXだって気持ちがいいんだろうけど、そういう彼の軽さがツチダを傷つけてもいる。「一緒にいて楽しい内は好きってことなんじゃない?」なんて適当なことをいけしゃあしゃあとのたまい、そんな男だから端々に思いやりがない。
調子の良さだけでここまで来れるのは人たらしの才として正直羨ましいくらいだけど、やっぱりああいう事を平気で言って女性を傷つけるような男は良くないと僕は思う。

▼何でもない会話の演出の素晴らしさ
ポーンと過程を省略して関係性を描いてみせたり結構大胆な構成だなあと思ったりもした。
「その場で相手の言葉を受けて言っている感じ」という会話の日常的リアリズムがちょっとどうかと思うくらい素晴らしくて、そうやって場面内で感情とかキャラクターを描ききれているからこそ思い切った省略が一貫性を乱さないのかもしれない。
一つ一つの書かれているセリフも、その演技も、「なんでこんなふうに会話が演出できるんだ」というくらい類型的でないことがリアリティと不可分でいちいち感動してしまった。

▼編集と行間について
編集で言うと劇中2度バンドの仲間と集まるけど、それぞれの直後に一人になったセイイチを映すカットが挟み込まれるのがとても良かった。テラオの車の中で聴いたバンドの新曲に対して彼が何に怒っていたのか、そんな彼は最後にどんな音を鳴らしていたか。
家に帰って彼が真っ先に作曲を始めるのは「あんな曲と比較されるのか」というプライドに火がついたからだと思うと、そういう瞬間を観客だけが知っているということに嬉しくなってしまった。

クライマックスで深い意味はないよと言って本当に深い意味の無い曲を歌うのが微笑ましいんだけど、歌ってる内容ではなく出来た曲をツチダに聴いてほしかったんだろうなと勝手に思うことにした。
「店を閉めていいって言ったんだけどあいつは来ないって」という田中の証言に反してセイイチは来た。もしかしたら直前まで曲を書いてて、それが完成したから真っ先にあそこに届けに来たのかもしれない。
また会おうねって別れるのも、そこから二人共振り返らないのもキャラクターへの優しさに溢れてて良かった。


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