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映画レビュー:No.657 RAW 少女のめざめ

raw 少女のめざめ
98分 / フランス、ベルギー合作
日本公開:2018年2月2日
監督:ジュリア・デュクルノー
出演:ガランス・マリリエール
エラ・ルンプフ
ラバ・ナイト・ウフェラ
ローラン・リュカ







この記事はネタバレを含みます。ご了承ください。




枝豆もアーモンドもあったら普通に食べるよという程度まで苦手を克服したのだけどグリンピースとレバーは未だに全く受け付けられない。

▼丁寧な脚本と物語の即物的な面白さ
カット尻が不穏に切れる、もしくはやたらと切れない。見せるところ、見せないところの煽り方が上手く、リアリティ的にも描写的にも嫌悪感を与える事に容赦のない作りが申し分なく機能している。
観る前にグーグー鳴っていたお腹がいつの間にかピタッと鳴き止んだ。
性的なメタファーなんてもっともらしい深読みも抜きに、物語的必然として設定を見せきっているからこその面白さだと思う。
主人公がカニバリズムに目覚める話というのは知っていたけれど「普通に学園生活送ってて何がどうなったら人肉食う流れになるんだ?」という観客の至極真っ当な疑問を丁寧な積み重ねで突破する脚本がよくできている。

▼映画のツイストや伏線回収について
先述した編集以外にも音楽と、何より色の演出効果が素晴らしい。特にオープニングクレジットとエンディングクレジットの色の反転はしびれた。
主人公は本能の解放と向き合う中で自分は人と違うんじゃないかという個性に対する不安を抱えているわけだけど、最終的に人の振り見て我が振り直せ的に落ち着きを見せた物語を最後の最後でもう一度救いなく突き放す。ドバっと溢れ出すような音楽使いも背筋がゾクリとする切れ味。
ベジタリアンという設定の回収の仕方も観終わってから考えれば気づきそうなものなんだけど、素直にゾクゾクしてしまった。考えなしに映画観ていてなによりだ。


▼画面構成で物語を示す映画的語り口
危険領域の赤、溢れ出す情欲の赤、女性の性の目覚めの赤と丁寧に赤を積み重ねていく。対比となる青も安定をもたらすかと思いきや赤が染み出してくるとても効果的な色彩演出。
最後まで観るとまさに血の話なんだけど寓意が物語に一歩先んじて結末の予感をはらんでいるのが画面に緊張感として表れている。

引きのカメラで縦(=奥行き)や横の構図を活かした見せ方もハッとさせられる面白さ。
対象をポツンと際立たせることで運動を強調するファーストシーンの画面設計からビッシビシにセンスを感じるし、後から考えるとあそこで人物の顔をはっきりと見せない事が物語展開に対してきちんと不穏な必然性がある。いとをかし。
基本的に主人公姉妹は横に動く演出をされている。中盤も押してた車椅子を捨てて引き返すという運動を横に見せている。逆に終盤引きの画面で群衆を映す場面は全員縦に運動している。同じ時間に主人公が狭い部屋にいる、大勢の平均的生徒達は広い外に出ていくという対比としても上手い。
主人公が縦に動く時はその先で一般生徒と交わる。もしくは縦に動く車に横に飛び出す主人公。作り手はしっかり彼女の個性を見つめてる。

▼表面的な部分の雑感
主人公のお父さんはビタミンの足りないウィレム・デフォーみたいな顔のローラン・リュカさん。去年観た地獄愛に続いて静かに狂った男の役をやっててそういう人なのかなと失礼な感想を持った。
あのお父さんが言ってたこととか最後まで観てから思い返すと結構含蓄があって怖い。「薬は完璧じゃないからね」とか。

めちゃめちゃよく出来ていてとても面白かった。
フランスの全寮制大学って映画であんまり観たことないけどあんなエグい縦社会があるんだろうか。一年生はみんなまとめて面食らってるからあれがデフォルトってことはないんだろうけど、先輩の管理下で見るからにプライバシーも貞操観念もぶっ壊れているのに大人が学問以外にはほぼほぼ関与しないってなんなら人肉食よりこっちのほうがカルチャーショックだった。
主人公は勉強できるみたいだから単にFランク大学ってわけでもなさそうだし、僕も学力と民度は比例するとばかり思ってたから大学まで行ってあれだとそりゃあアイデンティティも崩壊するわな。

★★★★★★★★☆ / 8.5点


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