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映画レビュー:No.666 犬猿

犬猿
103分 / 日本
公開:2018年2月10日
監督:吉田恵輔
出演:新井浩文
窪田正孝
筧美和子
江上敬子







ネタバレはありません。




アクセサリーを生理的に受け付けない肉体。

▼映画とACIDMAN
僕は映画ファンであると同時に身体の水分じゃない部分は全部ACIDMANで出来ていると言っても過言ではないほどのACIDMANファンなのだけど、そんな彼らが初の映画主題歌をやるというんでそれはもう嬉しかった。
しかもこれまた大好きな吉田恵輔監督自らご指名での一本釣りとのこと。わかってるぅ。「マイメン!」と抱きしめたい気持ちだ。
彼らも嬉しかったんだろう。CDデータの曲名に(映画「犬猿」主題歌)と入れてしまう有様で、結成20周年目にして5回の武道館公演をソールドアウトさせてきたそれなりのベテランバンドとは思えないはしゃぎようだった。
その上で、もちろんこのタイアップを擁護したいのはやまやまなのだけど、一生懸命ポジティブシンキングしてもあんまり吉田恵輔監督作とACIDMANが合うとは思えなかった。今まで宇宙とか愛とか歌ってきたバンドが急に兄弟げんかの映画の主題歌なんか書けるわけがないだろうと。
まあ結局そこはその通りだった。映画はいつもの吉田恵輔作品だし、曲はいつものACIDMANだし、元々別個に好きだった印象から一切の歩み寄りがなかった。きっと思い出作りのようなものなんだと思う。
だからこっちも何のかわからんけどご褒美みたいなもんだと思ってありがたく受け取った。「この映画観た全員がACIDMANを聴いてる!」と思えばえらい意義深いもののようにすら感じる。僕の知り合いのACIDMAN知らない族もきっと僕の事を思い出しながらあのエンドクレジットを眺めたことだろう。
ちなみに今作エンディング曲の「空白の鳥」は「Λ(ラムダ)」という彼らの最新アルバムに収録されています。チェックしとけ!
何が言いたいのかというと曲は最高だし、映画も面白い。現場からは以上です。

▼吉田恵輔監督作の"したたかさ"
とえげつないほど前置きが長くなったけど犬猿を観てきた。個人的には良くも悪くも吉田恵輔監督の作品だなあという印象を持った。「悪くも」という部分を含む分僕の中での吉田恵輔のベストは更新しなかった。「さんかく」とか「ばしゃ馬さん」の方が好きかな。

吉田恵輔監督の作品には常に一定のしたたかさがある。例えばキャスティングには毎回悪意のあるあてがきの手触りがあって、それによってキャラクターの属性の説明、もっと言えば必要な好感度や嫌悪感を手っ取り早く担保してしまう。
ただ、あてがきする分だけ少なからずわかりやすいキャラクター像から登場人物を出発させたり、ともすれば類型的に見えかねない諸刃な側面もあるにはある。
多分吉田監督はエンタメ性をとても重視する人で、その意味において「映画であること=虚構であること」に意識的な人なんだと思う。あくまでフィクションですよ!というのが彼の映画のリアリティで、観客に対しては作品の中の皮肉を客観的に観られるようにする配慮が常にある。
一言で言えばわかりやすい。「面白い」という感想を何よりも歓迎している監督だと思う。

▼兄弟の愛憎劇~人物の描き方
ただ本作は兄弟の愛憎劇なわけで、生涯ベストにフォックスキャッチャーを選定するほどブラザーコンプレックスにうるさい僕としては本作のフィクションとしてカリカチュアされた兄弟姉妹像はなんだかとても平和で健全なものに見えた。ステレオタイプな設定で単純化されたドラマだと思ってしまった。
ヤクザ、グラビアアイドル、もしくはデブでブスのコメディリリーフ、地味で地道な営業マンという主人公たちの人物像は良く言えばキャラが立っているが悪く言えば類型的にも映る。彼らの対比のさせ方にしたって良くも悪くも映画的だと思う。
兄弟という設定はある意味これ以上無いほど説明不要な日常的設定だと思うのだけど、吉田監督の映画においてはどうしても具体的な出来事を必要としてしまう。
ガーッと言葉にして雨降って地固まる、というのは一見とても派手な衝突に見えるけど僕に言わせれば全てをきちんと明るいところに出せるのだからまだ救いがある。
現実の僕らは例え話以上の意味を持つ「死ね!」という言葉を知らないし、対照的というほどはっきりとコンプレックスを意識することもあまりない。家庭以外にも世界があるのを知っているし、それを知っているから家族というものが特別な関係になったりもする。
家族っていうのは代替不能な分そこにあるコンプレックスは一生解決しないんだと思う。良くも悪くもね。少なくとも僕の中にはずっとゴリゴリしたしこりがあって、たまに触ってしまうと「あっ」ていう気持ちになる。
この映画の主人公達は結局面白おかしくぶつかるだけで、それは絵空事の中でしか観ない兄弟像だと僕は思う。
語弊を恐れず言えばうちの兄弟の方がずっと面白いよ。映画にはならないと思うけど。

▼人物の描き込みに対する疑問
キャラクターという意味で言っても映画の中の描写として正直人物像に口で言わせる以上の説得力が薄い。
特に筧美和子の妹は映画内で最も観客が長所を感じるキャラクターなわけだけど、その裏側にある劣等感を作り出す江上敬子の姉が良いとこ無さすぎてコンプレックスが成立してない。
話の都合で劣等感を演出されているようにしか見えなくて、正直どこまで行っても対等なケンカに見えなかった。筧美和子が強すぎる。

▼吉田恵輔監督作特有の映画の特性を活かした仕掛け
吉田恵輔作品には映画というメディアの特性を活かした演出が毎回あって、今回も一箇所びっくりする仕掛けがある。「映写事故だ!」と思って蕁麻疹出そうになった。テアトル新宿の支配人には個人的にお世話になってるのですぐに顔が浮かんでめちゃめちゃ気まずかった。ホッとしたらしばらく笑いが止まらなくてそれはそれで困った。
面白いこと考えるなあと思う。映画館で観てこその面白さだし、キャラクターの説明としても上手い。
あと窪田正孝は本当にカッコイイなと思った。ああいうタイプの直毛に常に憧れている。

吉田監督の作品なので品質保証分の面白さはあるのだけど、今作はそこ止まりだった。
エンディング曲が曲としてとてもかっこよかった。ACIDMANというバンドの「空白の鳥」って曲らしい。(ステマ)

★★★★★★☆ / 6.5点
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