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映画レビュー:No.667 サニー/32

サニー32
110分 / 日本
公開:2018年2月17日
監督:白石和彌
出演:北原里英
リリー・フランキー
ピエール瀧
カトウシンスケ
門脇麦
大津尋葵
加部亜門
駿河太郎







ネタバレはありません。



映画館で映画を鑑賞するたのしさを伝えるべく今観られる作品を紹介する映画ポッドキャストクルー「cinemactif」の二代目イラスト担当をやらせていただくことになりました。描いて描いて描きまくるぜ。良い仕事をすることでのみアイデンティティの承認を得られるのだ。
3月18日の神戸のイベントにも行くので、お会い出来る方はよろしくお願いします。
以上私信でした。

▼白石和彌監督の新作
なんてったって僕の去年の年間ベストを撮った白石和彌監督の新作である。縁あってタダで観れた。新宿周辺の映画館で縁故!縁故!とシュプレヒコールが聞こえたらそれが僕です。
今年は「なるたけ映画代金を安くあげるチャレンジ」を敢行中で1800円換算なら今のところ順当に25000円くらい節約している。実際に数字にするとヤバい。お店でA5ランクのステーキが食える。

まあタダであれなんであれ観たもんは観たので感想は書くけれど、これが奥歯ガタガタ言ってしまうくらいポンコツな代物だった。白石監督はディレクションの権利と利き手の指の骨のどっちかを選べとでも言われたのだろうか。
全編がネットで見聞きした知識で書いたみたいなペラッペラの内容だった。

▼脚本から漂う戦犯の臭い
まず登場人物の行動原理としても映画全体の超目的としても何がしたいのかさっぱりわからない、という点で時間芸術として壊滅的に破綻していると思う。
監督は「ジャンルが変容していく物語を狙った」と言っていたけれど単に一貫性が無く行き当たりばったりなだけだった。脚本から戦犯の臭いがプンプンする。
脚本の高橋泉さんは同じ白石監督の「凶悪」でも共同脚本をしているけど今回は単独クレジット。名前からシュッとした女の人をイメージして検索したらK DUB SHINEみたいな見た目の人でびっくりした。

僕はリアリティが無いということそれ自体が悪いこととは思っていないけれど、この映画の場合話運びにおいてゴリゴリにテクノロジーを頼っているのでそれはどうしたって現実っていうのが一つの基準として立ち上がってしまう。もちろんそれを利用する人物に対しても。
だからこの映画の場合「リアリティが無い」のではなく「リアルを描けていない」のだと思う。とにかく圧倒的な強度不足。姉歯もビビる欠陥っぷり。

▼人物描写について
出て来る人物がどいつもこいつも奥行きがない。人間が描けていないから人間関係の強度もヒョロヒョロで、結果キャラクター間のイニシアチブの奪い合い、関係性のドラマの面白さが全然演出できていない。
自分の理解の外側にいる人物の怖さ、もしくは安易な共感の危うさ、みたいな皮肉と反転がこの物語の狙っている"面白さ"の肝だと思うのだけど、それにはきちんと地に足の着いた「まともな視点」が必要になる。
そういう観客と一番近い感覚で作品の狂気を見つめる視点が最後まで無いというか、本来そういう役割を担うキャラクターが全然上手く描けていないから、最後まで展開に必然性が無くてどうでもいい話に見えてしまう。
キャラクターたちに関してはもはや手に負えないから投げやりにコメディしようとしたキライすらあるけど、僕はあんまりそういう破れかぶれなスタンスを「逆に」と評価するタイプではないし。
臨終の悪趣味な示し方と音尾が出てくるとこはちょっと面白かった。

▼行き当たりばったりでわかりにくい=説明するのが難しい話
単に話の因果関係だけを取り出しても行方不明者続出レベルでガッタガタよ。「何がどうしてこうなってるんだっけ?」って聞かれてその都度きちんと答えられる人いるのか?
そもそも納得しづらい動機から出発している不安定な話なのに、それを軸にさらに納得しづらい動機や心情の変化を展開していくんで常識的な想像力を持っている人ほどみるみる物語が遠ざかると思う。
およそこの映画が話を語るために持ち込んだ設定に関しては何一つ説明がされてない。

▼記号的な描写で人物の説明をすませるやる気の無さ
例えば物語の途中から合流するYoutuberみたいなキャラクターがいるのだけど、彼はYoutubeでもニコニコ動画でもなくSHOWROOMという動画配信サービスを使ってる。
僕はこのSNSを知らなかったんだけど例えば収益化出来るとか閲覧者の母数があるとか自己承認欲求の捌け口として優秀とか、そういう何かが既存の有名サービスに比べてあるんだろか。少なくとも観客にとっての必然性という意味において。本作のスーパーバイザーである秋元康がプロデュースしてるから?まさかねえ。
なんにせよ僕には全く意味がわからなかった。劇中で「全然誰も観てないじゃん」っていうけどそりゃそうだろう。SHOWROOMでバズったらどの程度の炎上が起きるんだろう。
こんな調子で全体的に「これはこういうもんなんで」っていう姿勢がチラチラ見える。それじゃ伝わらないし、仮に伝わってもそれは面白さとはまた別物だと思うわけ。

▼真面目に考えるのもバカバカしい
クライマックスに近づくに連れて都合の良さも加速度的に増してくんだけど、もうこの頃になると必要な思考力は残っていないので椅子に座っていることで精一杯だった。
「関係ないな」って出来事をモンタージュでそれっぽく意味有りげに見せて何かを解決した風というとってもぬるたい結末だし、サスペンスとしての位置関係や距離感などリアリティの考証も複雑骨折級。
一言で言えばバカバカしい。

とにかく残念だった。白石監督には「孤狼の血」ですぐに挽回のチャンスが有って本当に良かった。
多分あっちが僕達の本当に観たい白石和彌監督作なんだと思う。鼻血流す準備できてるので、頼むから頼む。
とりあえず今のところ今年ぶっちぎりのワーストでーす。

★★★ / 3.0点

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