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映画レビュー:No.676 ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ

ビッグシック
120分 / アメリカ
公開:2018年2月23日
監督:マイケル・ショウォルター
出演:クメイル・ナンジアニ
ゾーイ・カザン
ホリー・ハンター
レイ・ロマーノ





ネタバレはありません。




手フェチ。

▼関係性に必要な相互理解~世代、人種、文化という違いの先に
軸となっているのは主人公とその恋人の関係性なのだけど、決して色恋という狭いドラマに向かわず多様な関係性を通じた変化と成長を描くことで開けた物語を捉えるところがとても良かった。
コミュニケーション、他者と理解し合い良い関係を築くためヒントが沢山隠されているし、決して「これが正解」という完全解があるものでもないよというところも見据えている。

例えば人種とか育った環境の違いとか一つの出来事の結果だけを取ったりとか、よく知らないということを前に「この人はこういう人だ」という結論を出すのは簡単だと思う。
そうやって人生の可能性を閉じてしまうのではなく、受け入れて、会話して、相手を知るということはめっちゃポジティブだぜ!というのが本人役で主人公を演じている彼の世界の見つめ方なんだろうし、それがそのまま作品の良心的な人物描写に出ている。
彼は恋人も、家族も、友達も等しく大事にしていて、そこに優劣をつけない。そういったどちらかのためにどちらかを否定しないという態度が結果的に最もピースな形で世界の"悪"を否定しているような感じがする。
状況は厳しくてもとことんネアカな手触りの物語でとても好ましい。

▼ユーモアと寛容さ~思考停止ではなく繋がりを肯定する物語
社会がグローバルになって価値観は多様になったし、そういう多様な価値観が自分の生活圏という狭い世界にも当たり前のように流れ込むようになった。今は昔だったら交わらなかった衝突とか、新しい種類のディスコミュニケーションが色々なところで沢山生まれている。
わかりあえないことよりも繋がることの方が肯定的だと言うのは簡単だけれど、不安とか不寛容さとかそういう性質の感情もまた簡単に持ち合わせてしまえる。

アメリカ在住のパキスタン人である主人公はとてもわかりやすい形でそういうカルチャーギャップや偏見とぶつかりまくっている人物なのだけれど、彼はスタンダップコメディアンとしてそれらをユーモアに変えてしまう柔らかいたくましさがある。
そんな彼だから誰とも壁を作らない。そうやって繋がりを持つことをこの映画は肯定している。
誠実さやユーモアが最後まで裏目に出ないのは有る種の作り話だと言えるかもしれないけど(マジで嫌われたりとんでもない迷惑をかけたりというネガティブな結果はこの作品内では描いていない)、理想論もまたフィクションの大きな役割の一つだし、地でそういう人生観をスイスイと実行する主人公が実際にいるのだからしょうがない。

▼宗教的、文化的な非合理の現代的な捉え方
信仰という非合理に頼る必要のない時代を当事者の目線で描くのが面白いなあと思った。
今やそういうものは文化ではなく個性=よりパーソナルなものになったんだろう。個人の信仰は尊重すべきだけれど慣習は現代社会では時代遅れで説得力に欠ける。
だからといってそういう考え方を当たり前として育った人自体を否定する必要は無くて、信仰を持つ個人ではなく宗教的非合理こそをユーモアと寛容さで突破する。
みんな変われるし、変わることに後ろめたさや恥ずかしさを覚える必要もない。価値観はそもそもより良い関係性を築くためにあるもので、違う考え方にぶつかった時は話をすればいい。

▼普遍的な人間関係の話
別に人種や世代というわかりやすい違いでなくたって人は誰に対しても大なり小なり印象の良し悪しを持つ。第一印象一つ取ってもどうしたって全てを好意的に受け止められるものではない。人間だから仕方がない。
そういう時にコミュニケーションやユーモアがいかに僕たちを助けてくれるのか、そういう一つの答えを与えてくれる物語。
「こっちから見れば最低の人でも誰かにとっての大切な人」という想像力も、「怒っているけれど嫌いなわけじゃない」という難局に対する教訓も、「一つ嫌いなところがあってその人の全てが嫌いなわけじゃない」という親愛の複雑さも、こういう物語から学ぶ事ができる。
理解して受け入れることは口でいうほど簡単じゃないけど、誰かとわかりあえるってのはやっぱり素晴らしい。

★★★★★★★★ / 8.0点

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